メッセージの解読
「まるでご自身で見たような口ぶりですね。どうしてそう言えるのですか?」
ラチェットの自信のある口ぶりに疑問を持ったクランチ。
この氷の塊を作ったのもラチェットであるならば、犯人に一番近いのはラチェットと考えるのが普通だろう。
しかし当のラチェットは慌てもせず、落ち着いたまま。
そして…
「トルクがそう言ってる」
そう言って、床に書かれたメッセージを指差した。
「マイナス211…ですか?」
「え?そんな事書いてない」
「では何と書いてあるのですか?」
「これは…」
「いてー」
「…は?」
「凄く痛かったらしい」
「いやいや…嘘だろ?」
つい素で突っ込んでしまうクランチ。
「ええ?どう見ても「いてー」でしょ?」
氷の温度管理をしていたトルク。他の事に夢中になってしまってすっかり氷の存在を忘れ、氷が溶けて頭を直撃したのだろうと。
つまり事故。
「まさか…そんな…」
くだらなすぎて頭を抱えるクランチ。
ちらりと夫人を見れば、メイドから頭痛薬と胃薬を受け取っているところであった。
その後回復したトルクに話を聞くと、ラチェットの言う通りだと認めた。
頭に包帯を巻いたトルクが「管理面倒」とラチェットに告げ、ラチェットは納得。
そしてまたすぐに魔物の討伐に出かけて行った。
。。。
そもそも今回の食事会は、コーナーとブロワ嬢の関係を知ったレンチ夫人が、ブロワ嬢とトルクの婚約を解消し、新たにコーナーとブロワ嬢との婚約を結びなおすための話し合いをするために設けたものであった。
しかし想像以上に二人がバカップルだったことが判明したので、夫人は強制的に二人を婚約させたのち、王都から離れた親戚に預ける事にした。
今後、他の人に迷惑がかからないようにするためである。
行き先は通年気温がマイナスの北の土地。魔物も多いのでコーナーは魔法を鍛える事になるだろう。
そしてトルクには一言だけでの会話を禁止した。
「口を動かすのが手間」と言うトルクに、最低でも5つの単語を並べるよう約束させる。
「それで?今回の件を言ってごらんなさい」
夫人がそう言えば、トルクは少し考えて…
「氷 管理 失敗 事故 いてー」
と答えたのであった。
お楽しみいただけたなら幸いです。
お気付きになられたかもしれませんが、それぞれの名前、アンナ以外は全て「工具」です。
お読みくださりありがとうございました。




