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ここは寒くない、でも

唐突に自身が落下しているという事実を突きつけられ、走馬灯も見る暇なく落下してゆく自分の不甲斐なさを噛み締めながら最後まで足掻こうと手足を動かすも、地面に激突しぐちゃぐちゃになってしまい、幽霊になり体から自身の魂が離れてゆくのをはっきりと自覚し、魂、言わば幽霊が存在するのか、という10数年に渡る疑問の解が出たことにある種の関心を抱きつつ、私は死んでしまったのか、結構痛かったなあと言った死に対する感想、後悔を感じ、また時間が経つに連れて自身の人生を振り返り、ああ、あの時こうしていれば、あれをしなければ、とどうすれば死という不可逆的なイベントを回避できたのだろう、と数多もの方法が思いつくものの、それらはもはや、自分が死んでいるのだからゴミ同然だ、という思考に至るまでにそう時間はかからず、すぐにこの先に待ち受けるのはなんだろう、転生?天国?いや天国は有り得ないな、といった案外冷静な考えが浮かんで来、また真に死ぬというのはどう言ったことなのだろうと、自身の生が終わったこと、そしてそれなのに自身がまだ魂、霊として存在していることを照らし合わせて考えるのだが、その答えとして今まで(生きている時)に知っていた「死」とは3次元的なもの、言わば3次元からの解放であり、自身が今いる世界から解き放たれた時、言い換えれば、魂、霊からの離脱、もっと言えば「無」になるということなのか、はたまた魂や霊から離脱した時、別の何か計り知れぬものに昇華するかと言ったような疑問が浮かんでくるものの、それらに対する明確な答は得られぬまま自らが上空へと上がって行くのが感じ取れ、全く寒くない上空、3万フィートとはこういうものかといった楽観的感想を抱きつつ、巨大な扉が眼前にあるのを確認し、誰に言われたのでもないが、ああ、私は今から開くこれに入るのだなと無意識的に理解し、大きいな、とか縁はメッキか?金か?そもそも、私、いや人類の常識で測れるような代物で出来ているのか?みたいな、またもや自らを満たしてくれもしない貧相な疑問で頭が埋められてしまったが、ハッと意識を目の前にあるものに集中してみると、扉がゆっくりと開くのが分かり、先程までの様々の疑問は嘘のように頭から消え去り、扉の奥には何があるのだろうと言う至極当然の疑問に置き換わり、そして扉が開くにつれその疑問に対する答が徐々に、パズルが完成するかのように、底知れぬ程長い廊下の蛍光灯が頭上から順に奥へ奥へと点灯していくかのように、されどそれとは対照的に、中は真っ黒なのだと気づいていくのであったが、まあこんなものかと軽く肩を落とす自分に、扉は中へ入れと強く誘うが、意に関係なく自身の体は扉の中へとゆっくりと吸い込まれてゆくのが分かり、闇の奥には何があるのだろうと考えるが、全く検討がつかず、神がいるのか、はたまた天国、地獄どちらへ行くのかの選別が行われるのか、といったような有象無象の疑問が生まれるのみであったが、中へ入るとパッと明るくなり、自身の周りには何も無いことが分かり、その時、ああ、私は死んだのだなと、今までに浮かんできた全ての問に対する明確な解が現れた。

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