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天才(馬鹿)とサンタは紙一重  作者: 紫雲
発見器と出会い編
4/9

室長の憂鬱

私の名前は武藤優作。とある研究室の室長を務めている。

私には「世界一」と称された男、吾析という息子がいる。世間では天才だという声も多いが、私はそう思っていない。あいつの本質は、尽きることのない子ども心と、計り知れないほどの“馬鹿さ”にある。実際、あいつは今でもサンタクロースを信じている。もしかしたら、そう思い込ませたきっかけは私かもしれない。


だが、小さいころの息子に「サンタクロースはいるの?」と、あの純粋な瞳で尋ねられたら、いると言うしかなかったのだ。その一言が、のちに私を苦しめることになるとは思いもしなかったが――。


息子が中学3年生のときだったろうか。

ある日、当時から研究に没頭していた私のもとへ来て、「その資料を見せてほしい」と言ってきたのだ。その資料とは、相対性理論を応用した新技術開発に関するものだった。それ以来、あいつはなぜか私のことを「室長」と呼ぶようになり、学校にも行かず、私の研究を発展させることに熱中し始めた。はじめ私は、何度となく学校へ行かせようとしたが、あいつはそれを断った。


そこで私は、「この課題を解くことができたら、学校へ行かなくてもいい。ただし、解けなかったらちゃんと学校に行け」と言い渡した。

もちろん、その課題を中学生の息子が解けるはずはないと思っていた。だが、あいつはあっさりと解いてみせたのだ。しかも、内容を完璧に理解していた。私の思惑は外れ、あいつはそのまま私の研究を手伝うようになる。


そしてあいつは、とうとう作り上げてしまった――タイムマシンを。

もっとも、当時の技術レベルでは不完全にすぎなかったが、それでも「タイムマシンに近い装置を作った」として、あいつは世界の注目を集める。しかし、普通ならそこで満足して終わるところを、あいつはさらに未来へと旅立ち、タイムマシンを完成させてしまったのだ。未来に行ったところで本当に完成できるかは分からないはずなのに、あいつはまったく躊躇しなかった。本当に大馬鹿者だ。


そうして未来から戻ってきたかと思えば、とんでもない“爆弾”を背負って帰ってきた。

あいつが持ち帰った物は他にも色々あったが、特に問題となるのが、完成したタイムマシンと、未来の政府からの「今後、現代においてタイムマシンを公表することを禁ずる」という署名書類だった。未来の歴史によると、タイムマシンが本来開発されるのは今から300年以上も先だという。それをあいつが前倒しで実現させたことで、もしこの事実を公表すれば歴史が改変され、極めて危険な状況になるらしい。そのため、未来の政府は、私の息子を監視するために未来から人を送り込んできているという話だ。


ところが、当の息子はそんな事情などお構いなしに「サンタクロースを見つけてくる」と言い残し、どこかへ行ってしまった。

あいつは自分が置かれた状況の深刻さなど、まったくわかっていないのだろう。大惨事にだけはならないことを、私は心の中で祈るばかりだ。


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