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宝の森  作者: サバサバ
5/6

奥森くん②の参

「こんにちは…」


奥森くんと、また会ってしまった。


私の側にいたまるが、てとてと、と。


奥森くんのほうへ歩いていく。


まるは、私と違って人見知りせず、人懐っこい。


奥森くんは、(かが)んで、まるの頭を優しく撫でた。


まるは、気持ちよさそうに目を細める。


「可愛い。名前は?」


「まるです。丸々してるから。」


「ふっ。まるっていうんだ。まる」


「にゃー」


まるが奥森くんに体を擦り付ける。


(まると奥森くんが、じゃれあってる…。

あ、そうだ。奥森くんに聞きたいことがあったんだ。)


「あの…奥森くんに聞きたいことがあって…。」


「うん。」

奥森くんは、手を止めて私を真っ直ぐ見てくれる。


「…えっと、前に奥森くんが宝の森って言ってたの、気になって。宝の森って何だろうなって。」


奥森くんは黙って数秒間、考えた後。


「宮田さん、こっち来て」

と、手招きする。


誘われるまま奥森くんのほうに行ってみる。


奥森くんがバックから何かを取り出した。


「これが取れるから宝の森って言われているんだ。」


奥森くんの骨ばった大きな手のひらの中に、青く輝く丸い石があった。


まるで夏空の色。


「綺麗…」


なんて魅力的な石だろう。


「持ってみる?」


「うん。」


石に触れると、とても硬い。


空に(かざ)すと濃い青色が薄くなり光をあびてキラキラと輝いた。


「その石は、竜の石って呼ばれる宝石なんだ。」


「竜の石?」


「うん。竜の死体から出てくる竜の心臓なんだよ。それが竜の石。」


ちょっと待ってください。


「竜って存在するの!?」


奥森くんの顔を凝視してしまう。


奥森くんは笑って即答した。

「竜は、いるよ。宝の森に行けば必ず竜に会える。まあ、色々と大変だけど。」


奥森くんの瞳が輝いてみえる。


「大変な思いをしてまで、宝の森へ行くんだね。」


「うん。まだ見つけていない希少な竜の石があるから。必ず見つけたいんだ。」


なんだろう。奥森くんが羨ましい。


…私には何もない。


「宮田さん良かったら、その竜の石をもらってくれる?」


「えっ…いいの?」


「宮田さんに気に入ってもらえたみたいだし。宮田さんなら大切にしてくれると思うから。」


「ありがとう。大事にする。」


奥森くんから貰った竜の石を見つめる。


「そろそろ行くね。宮田さん、まる」


「にゃー」


「奥森くん、宝の森のこと教えてくれて、ありがとう。」



そして、奥森くんは坂道を登って行った。



「イケメンなひとだね?」


「うわっ!?」


後ろから声が聞こえて思わず叫んでしまった。


「お姉ちゃんの知り合い?なわけないか。イケメンの知り合いなんて、人見知りのお姉ちゃんには、あり得なさそう。」


ズバズバと傷つける言葉を放つ妹。


「余計なお世話。…奥森くんはクラスメイトだよ。それだけ。」


「そっか。でも楽しそうに話してたよ。お姉ちゃん。」


「…」


それは、そうかもしれない。


奥森くんと別れる時、もう少し話したいって思ったから。


奥森くんと、宝の森のことをもっと話したい。


「で、何か用があったんでしょう?」


振り向き、話題を変える。


「お母さんが心配してたよ。洗濯物を取り込みに行ってから、なかなか戻ってこないって。」


「ごめん。まるも一緒に行こうか。」


洗濯かごを持って家へと戻る。


…明日、学校から帰ったら行ってみようかな。


宝の森へ。

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