奥森くん②の弐
扇風機は唸りながら、生ぬるい風を送ってくる。
「暑い~」
もう、体中が汗でびっしょりだ。
休日。
暑さを避ける為に家でごろごろしてだけれど、
これじゃあ、外も家も変わらない。
「お姉ちゃん、お母さんが洗濯物、お願いって」
「分かった」
美少女の妹に言われ外へ出た。
外は、強い日差しで真っ青な空には入道雲。
庭の物干し竿に干してある洗濯物が、風にはためいていた。
洗濯かごに洗濯物を入れていく。
額から汗が流れ首筋を伝う。
「いつまで暑いんだろ」
愚痴を言いつつ、最後の洗濯物を洗濯かごに押し込め、洗濯かごを持って玄関へと向かった。
「にゃー」
「まる。お帰りなさい」
飼い猫の『まる』が、上目遣いで私を見てくる。
声は勿論、猫なで声だ。
これは、『エサをくれ』に違いない。
「ごめん、今、忙しいからエサは後でね。」
一応、まるに謝罪するも。
まるは、私の意見など関係ないと意に介さず、にゃーと、さっきよりも更に高い声でエサを催促してくる。
「はぁー。」
私は降参とばかりに、かがんで、まるの頭を撫でた。
「ゴロゴロ」
まるは、嬉しそうに喉を鳴らす。
「ふふふ。」
自然と笑顔になっていく。
その時。
「こんにちは宮田さん。」
呼ばれて顔を上げる。
奥森くんが、いた。
相変わらずの黒づくめの姿で。