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宝の森  作者: サバサバ
3/6

奥森くん②

翌朝。


暑さが、まだ和らいでいる早朝、学校へ登校した。


担任から教室の鍵を預り、施錠された扉を開ける。


「うっ」


教室の中は夏特有の蒸し暑さに加え、淀んだ空気が鼻を刺激した。


思わず顔をしかめ、息を止める。


急いで教室の全ての窓を開け放った。


清涼な風が教室に入ってくる。


汗をかいた髪を風が優しく撫でてくれた。


(涼しい…)


胸いっぱいに新鮮な空気を吸い込んだ。


×××


風を感じながら、教室を見渡す。


クラスメイトがいない教室は静かで、まるで時間が止まったみたいだ。


いつも使っている教室なのに不思議な感じ。


自分の机にカバンを置き、椅子に座った。


(昨日は、初めて奥森くんと話したな…。)


一言、二言だったけど。


そういえば奥森くん、黒づくめだったな。


黒が好きなのかな。


大粒の汗をかいた笑顔の奥森くん。


真っ直ぐ奥森くんの顔を見たのは昨日が初めてで。


「いつもの奥森くん」は教室で友達と話す横顔と、


後ろ姿。


そして、声。


私の知っている奥森くんは、それだけだった。


『宝の森が、すぐ近くにあるし。羨ましい。』


宝の森って何だろう?


ちゃんと聞いておけばよかったな。


(でも…)


きっと二度と奥森くんとは、話すことはないだろうと思う。


あの日は、たまたま話す機会があっただけ。


特別だっただけ。


話さないことが『普通』なんだ。


×××


その日、学校で私と奥森くんは一言も話すことはなかった。


(宝の森のことは、一生、分からないままだろうな。)


昼休み、友達と話す奥森くんの横顔を見て、思った。

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