1ー聖女召喚
「幼女が足りない。足りないんだっ」
俺はそう言って、魔法陣の最後の線を引き終わった。
円状に敷き詰められた古代文字と方角を表す線は、五時間かけた力作だった。
意味は聖女様来てください、お願いします。
もうオイラたちダメなんです。あなたが来てくれなきゃ僕たちは死んじゃいます。みたいな感じだ。
まあ国が困ってる訳でもないが。
賢者よ、何を使ってでも聖女を召喚せよ。
と師匠の代わりとして、先代の国王に言われた俺。
ルーク・クロイツ。
召喚魔術を失敗するたびに物が増え、俺の部屋は物が散乱していた。今では何処に何があるのか、俺にもわからない状態だ。
誰が言ったか、惨劇の汚部屋とはよく言ったもの。
その通りだ。
何せ聖女召喚魔術など、何千年も昔の儀式魔術。
やれと言われてすぐ出来るものではない。
そもそもまず、古代の文献には聖女の記録がほとんど載ってなかった。
文献を漁り、解読しつつ、一歩一歩前進していた。
と思う。
そして今日、終わりをむかえるのだ!
意気込んでみたが、ふと違和感に気づいた。
視線をむける俺の手は、ブルブルと震えていた。
魔方陣を書き終えた所でよかった。
そろそろ来る頃だと思ったが、やっぱりきたか。
幼女不足で、手が震えて来やがった。
俺には趣味があった。いや、生き甲斐と言うべきだな。
幼女を眺めると言う、素晴らしき生き甲斐だ!
魔族が魔力で生きてるなら、俺は幼女を眺める事で生きている。
そんな俺の生き甲斐を、城の連中は業務に差し支えるので。と言う理由だけで禁止したのだった。
もう一週間前もとじ込もっている。
震えが起きてもおかしくはなかった。
俺は聖女召喚を急いだが、能力や情報が上がるわけではない。
そんな時、ある夢を見た。
それは懐かしいような、ぷにぷにのほっぺをした幼女様の夢だったと思う。
なにせ夢だ。ぷに以外、正確には覚えていない。
だが夢から目が覚めた時、俺の直筆でかかれた紙があった。そこには記憶にはない、今までとは異質な構築で書かれた魔術式。
俺はこれを見て思ったね。
これは幼女様、女神様のお導きだ!
幼女愛の賜物だと。
そうして術式を書き、組み上げ、今にいたる。
「早く幼女を補充しなければ、俺が死んでしまう」
もう俺の幼女愛がいつ暴走して、国を滅ぼしてもおかしくない状況だった。それは誰がみてもわかるだろう。
わからない奴がいれば、そいつはまだまだ幼女崇拝レベルが低いな。
「早くこの地獄を終わらせよう」
深呼吸をした後、魔力を注ぐため魔法陣の端にそっと触れた。俺と術式を魔力でつないだその瞬間、今でにはなかった兆候が表れた。
魔法陣は、青白い光を発したのだ。
俺の幼女愛で徐々にその光は強くなる。
「せ、成功だ」
光は魔力を吸うごとに輝きをさらに増してく。
部屋が徐々に明るく照らされていくのだが、おかしな事が起きた。
魔力の消耗が…………激し過ぎる。
みるみる魔力が光へと変換されていくのだ。
「おぃおぃっ、古代魔術がこんなに魔力を消費するなんて知らないぞ」
終わらない魔力の消費。それと共に、頭に痛みが走った。
魔力が切れるサインだ。
だが、ここでやめれるはずがない。
俺には、次の満月まで待ってる時間はないんだ。
鋭くなる痛みに耐え、歯を喰いしばった。
「俺の……幼女愛を。なめんなぁーーーっ」
俺の叫びに答えるかのようにビカーーーッと光が部屋を覆い尽くす。
そして、魔力の流れもピタリと止んだ。
「こ、今度こそ成功だ! これが、幼女の力だ!」
息を切らしながら、魔方陣を見つめる。
光は徐々に魔方陣へと帰り、聖女様の立っているシルエットが見えた。
どうやら、聖女様は小柄な人らしい。
「おいおいっ、ウソだろ?」
俺は立ち尽くした。
光がおさまり、僕の目の前に飛び込んで来た、神々しい方は。
『血まみれの幼女様』だった。
よ、幼女様だと? いや、血まみれの天使様か?
あっけにとられているうちに、幼女様はその場にドサッと倒れた。
腰まである青みがかった白髪も血に染まり、白いワンピースは所々裂け、赤く染まっている。
聖女がなんで血まみれなんだ?
儀式のせいか?
術式そのものが失敗だったのか?
いや、考える場合じゃないぞっ。
首を横に降り、幼女様へと歩み寄った。
幼女様の背中にも、べったりと血がついている。
「何て酷いんだ」
もしかしたら、既に死んでいるかもしれない。
それでも俺は、必死に呪文を唱える。
「我が魔力を持ってかの者の傷を癒せ、完全回復」
魔法の白き光は幼女様を包み込み、傷口はゆっくりとふさがってくれた。
大丈夫。なんとかなった。
意識はまだないが…………聖女様。
マジ天使!
「クソッ」
残り少なかった魔力を使ったせいだ。さっきよりも頭痛が酷い。
儀式のすぐ後に上級魔法は厳しかったか?
だが、幼女様を見殺しにでもしたら、俺の幼女魂で自分を殺していただろう。
血だらけの聖女が召喚されるなんて、文献には書いてなかったのだから。
ダメだ……足の踏ん張りがきかなくなってきた。
目を開けるのさえ辛い。
目の前に幼女様がいるのになんてざまだっ。
俺よっ。
幼女への愛が本物だと今こそ証明するのだ!
踏ん張れ! 負けんなよ!
しかし、俺の体は耐えられる訳もなく。
「お、俺の命で、幼女様を……助けれて…………本望」
ドサッ。
むなしくも今度は俺が、その場に倒れてしまった。
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