表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

漫才『瓜二つ』

作者: 紫 李鳥

 


ツッコミ「どうも、アッチで~す!」


ボケ「どうも、コッチで~す!」


二人「二人合わせて、『アッチ・コッチ』で~す! よろしくお願いしま~す!」


ツッコミ「こっちがチビのアッチで~す!」


ボケ「こっちがノッポのコッチで~す!」


ツッコミ「なぁ、コッチ?」


ボケ「なんや? アッチ」


ツッコミ「コンビ名、改名せんでよかったな」


ボケ「ほんまやな。こないに大勢のお客さんが来てくれてるんやもんな」


ツッコミ「それも口コミでやで。前回、一人しかおらへんかった、あの陰気臭いおっさんの口コミやで」


ボケ「人は見かけによらんな。いっこも笑わんといて、寝てるんやか、起きてるんやか分からへんかったのにな」


ツッコミ「ま、最後には拍手してくれたけどな」


ボケ「そうやったな。顔はボチボチやったけど、することは(いき)やったな」


ツッコミ「ほんまや。人は見た目で判断したらあかんってこっちゃ」


ボケ「ほんまやなぁ。なぁ? アッチ」


ツッコミ「なんや? コッチ」


ボケ「話は変わるけど、実はな、悩みがあんねん」


ツッコミ「自分みたいに、のほほんとした顔でも悩みがあるんか」


ボケ「のほほんて、どない顔やねん。俺かて悩みぐらいあるわい。悩みの玉手箱やで」


ツッコミ「気色悪いわ。ふた開けんとこ。で、なんやねん、悩みって」


ボケ「彼女のことなんやけどな」


ツッコミ「誰の?」


ボケ「誰のって、俺のやがな」


ツッコミ「エッ! ウッソ! ほんまに? やーだ。自分に彼女はおらんやろ」


ボケ「失礼なやっちゃな。俺かて彼女ぐらいおるわい」


ツッコミ「いつの間に未確認飛行物体に乗った生物と合コンしたん?」


ボケ「アホか。宇宙人ちゃうわ。俺らと同じ人間や」


ツッコミ「自分は人間ちゃうやろ? そんなノッポの人間はこの地球におらへんで」


ボケ「そんなもん、ざらにおるわ。たかが180やんけ」


ツッコミ「180はざらでも、股下10センチの180はおらへんで」


ボケ「そんなん、おっきなお世話や。そこまで短ないで。それより、悩み聞いてや」


ツッコミ「どないしたん?」


ボケ「実はな、彼女、メチャメチャ気ぃ強いねん」


ツッコミ「どのぐらい、気ぃ強いんや?」


ボケ「このぐらいって、そんなもん測れるかい」


ツッコミ「例えば、どんなふうに気ぃ強いんや?」


ボケ「例えばやな、待ち合わせするやんか?」


ツッコミ「うん」


ボケ「ほんの一秒遅れただけでも、ガミガミ言うて怒んねん」


ツッコミ「そんなもん、気の強いうちに入らんわい」


ボケ「なんで?」


ツッコミ「俺の彼女なんかスゴいやで」


ボケ「どんなふうに?」


ツッコミ「一秒でも遅れてみ、刃傷沙汰(にんじょうざた)やで。バッグから出刃包丁を二本出して、アッチ、遅かったな。覚悟はできとるじゃろうな?と一言(ひとこと)


ボケ「なんや、年取った宮本武蔵みたいやな」


ツッコミ「とたん、二本の包丁を俺に目掛けて、シュッシュッと投げつけんねん」


ボケ「ほんまかいな?」


ツッコミ「こっちは身をかわすのに四苦八苦や」


ボケ「なんや、大道芸みたいやな」


ツッコミ「この一秒がどれほどに長い時間であったか、一日千秋(いちじつせんしゅう)の想いでござった」


ボケ「何弁やねん?」


ツッコミ「いろはにほへとちりぬるを」


ボケ「なんやねん? それ」


ツッコミ「中略。ゑひもせすん。と一言」


ボケ「意味分からん」


ツッコミ「おいどんも分からんでごわす」


ボケ「西郷隆盛になってるやんけ」


ツッコミ「アッチ? あっち向いてホイ。おぬしの負けでごわす。大阪の(かたき)は鹿児島で、と。メチャメチャ斬新やで」


ボケ「どこが斬新やねん。メチャメチャ古いやないかい。変わった女と付き合うてるな」


ツッコミ「それも、大女(おおおんな)や。自分よりデカいで」


ボケ「それは大きすぎやわ」


ツッコミ「それに加えて、自分に瓜二つや」


ボケ「……ん?」


ツッコミ「何を隠そう、自分の妹や」


ボケ「なんや、妹のほうで、まだよかったわ」


ツッコミ「なんでや?」


ボケ「姉のほうは、自分に瓜二つやもん」


ツッコミ「……ん? もうええわ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ