漫才『瓜二つ』
ツッコミ「どうも、アッチで~す!」
ボケ「どうも、コッチで~す!」
二人「二人合わせて、『アッチ・コッチ』で~す! よろしくお願いしま~す!」
ツッコミ「こっちがチビのアッチで~す!」
ボケ「こっちがノッポのコッチで~す!」
ツッコミ「なぁ、コッチ?」
ボケ「なんや? アッチ」
ツッコミ「コンビ名、改名せんでよかったな」
ボケ「ほんまやな。こないに大勢のお客さんが来てくれてるんやもんな」
ツッコミ「それも口コミでやで。前回、一人しかおらへんかった、あの陰気臭いおっさんの口コミやで」
ボケ「人は見かけによらんな。いっこも笑わんといて、寝てるんやか、起きてるんやか分からへんかったのにな」
ツッコミ「ま、最後には拍手してくれたけどな」
ボケ「そうやったな。顔はボチボチやったけど、することは粋やったな」
ツッコミ「ほんまや。人は見た目で判断したらあかんってこっちゃ」
ボケ「ほんまやなぁ。なぁ? アッチ」
ツッコミ「なんや? コッチ」
ボケ「話は変わるけど、実はな、悩みがあんねん」
ツッコミ「自分みたいに、のほほんとした顔でも悩みがあるんか」
ボケ「のほほんて、どない顔やねん。俺かて悩みぐらいあるわい。悩みの玉手箱やで」
ツッコミ「気色悪いわ。ふた開けんとこ。で、なんやねん、悩みって」
ボケ「彼女のことなんやけどな」
ツッコミ「誰の?」
ボケ「誰のって、俺のやがな」
ツッコミ「エッ! ウッソ! ほんまに? やーだ。自分に彼女はおらんやろ」
ボケ「失礼なやっちゃな。俺かて彼女ぐらいおるわい」
ツッコミ「いつの間に未確認飛行物体に乗った生物と合コンしたん?」
ボケ「アホか。宇宙人ちゃうわ。俺らと同じ人間や」
ツッコミ「自分は人間ちゃうやろ? そんなノッポの人間はこの地球におらへんで」
ボケ「そんなもん、ざらにおるわ。たかが180やんけ」
ツッコミ「180はざらでも、股下10センチの180はおらへんで」
ボケ「そんなん、おっきなお世話や。そこまで短ないで。それより、悩み聞いてや」
ツッコミ「どないしたん?」
ボケ「実はな、彼女、メチャメチャ気ぃ強いねん」
ツッコミ「どのぐらい、気ぃ強いんや?」
ボケ「このぐらいって、そんなもん測れるかい」
ツッコミ「例えば、どんなふうに気ぃ強いんや?」
ボケ「例えばやな、待ち合わせするやんか?」
ツッコミ「うん」
ボケ「ほんの一秒遅れただけでも、ガミガミ言うて怒んねん」
ツッコミ「そんなもん、気の強いうちに入らんわい」
ボケ「なんで?」
ツッコミ「俺の彼女なんかスゴいやで」
ボケ「どんなふうに?」
ツッコミ「一秒でも遅れてみ、刃傷沙汰やで。バッグから出刃包丁を二本出して、アッチ、遅かったな。覚悟はできとるじゃろうな?と一言」
ボケ「なんや、年取った宮本武蔵みたいやな」
ツッコミ「とたん、二本の包丁を俺に目掛けて、シュッシュッと投げつけんねん」
ボケ「ほんまかいな?」
ツッコミ「こっちは身をかわすのに四苦八苦や」
ボケ「なんや、大道芸みたいやな」
ツッコミ「この一秒がどれほどに長い時間であったか、一日千秋の想いでござった」
ボケ「何弁やねん?」
ツッコミ「いろはにほへとちりぬるを」
ボケ「なんやねん? それ」
ツッコミ「中略。ゑひもせすん。と一言」
ボケ「意味分からん」
ツッコミ「おいどんも分からんでごわす」
ボケ「西郷隆盛になってるやんけ」
ツッコミ「アッチ? あっち向いてホイ。おぬしの負けでごわす。大阪の敵は鹿児島で、と。メチャメチャ斬新やで」
ボケ「どこが斬新やねん。メチャメチャ古いやないかい。変わった女と付き合うてるな」
ツッコミ「それも、大女や。自分よりデカいで」
ボケ「それは大きすぎやわ」
ツッコミ「それに加えて、自分に瓜二つや」
ボケ「……ん?」
ツッコミ「何を隠そう、自分の妹や」
ボケ「なんや、妹のほうで、まだよかったわ」
ツッコミ「なんでや?」
ボケ「姉のほうは、自分に瓜二つやもん」
ツッコミ「……ん? もうええわ」