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平穏が崩れる音

誤字がありましたら言ってください。

 次の日の朝、清原は札束並の攻略本を作ってきてくれた。攻略者の説明まで書いてある。すごいな、さすがこの偏差値高い高校に入れるだけあるな。かなり見やすく読みやすい。

 ちなみに清原は直ぐに追い返した。職員会議あるからと。


 読んでみるとどうやら次にくるイベントは、中庭で虐められるというものらしい。話しただけで嫉妬する女を好きにやる男はあまりいないんじゃないかと思うんだが…まぁ、そのいじめる役の悪女ちゃんはどうやら転生者らしいから問題無さそうだが。


 その舞台中庭は保健室の窓から見ることが出来る。高みの見物と行こうじゃないか!


 お!清原が来たなー、ん?なんで清原の周りに攻略者らしきのが3人がいるんだ?

 いや、らしきじゃない絶対攻略者だ。攻略者はあからさまに自分の色の着いたものを着るなりつけるなりしているからな。青、黄、白…!?白色の髪!?あの子アルビとだと!すごい!あれ?攻略本には逆ハーで出てくる隠しキャラって書いてあるが…清原はゲームの知識を活かして攻略したんだな。

 …そういえばどうするんだろう?このイベント悪女ちゃんが既に攻略してそうな翠の子なんだが。


 …嫌な予感がする。まさか小説みたいに自分からいじめられに行かないよな?


 あ、目の前から来ますは悪女ちゃんとその攻略者2人。紫と緑、人数で負けてますね悪女ちゃん。ここに居ないのは、先生と生徒会長。銀と赤ですか。

 どちらも忙しそうなキャラですか…


 んーでもこのまま行くとやばくないか?

 私は攻略本を見る。このイベントは池の鯉を見ていた清原の背中を悪女が押すシーンらしい。

 だがおかしい。それを見た翠が助けるみたいな展開らしいが…清原が攻略対象を連れて歩いている時点でこれは破綻するよな?攻略対象がガッチリ護衛ぽい役割りになるし、何がしたいんだ?


 どちらにせよ、今2人が出会うのはまずい。

 清原は悪女ちゃんを敵だとしか思っていないし、多分悪女ちゃんはヒロインとか、ゲーム補正とか気にしてるんじゃないかな?やばいな、何とかしないと。


 まだふたグループとも気づいていないな。よし。私は体育教官室に走り出す。体育の先生の宮澤先生は生徒指導の先生だ。あと生徒からはゴリラと言われるくらいの屈強な大男。


「失礼します。保健室の石田です。宮澤先生少しよろしいでしょうか」


 ◇


 この後、何も事情は言えないが何とか宮澤先生を裏庭に連れていくことに成功した。連れてきた時は既に悪女とヒロインが向かい合っていて、やばそうだったけど、まぁなんとかなった。本当に宮澤先生には頭が上がらなくなりそうだ。ありがとう。


 私はやっと落ち着いた気持ちになり、保健室の扉を開けた。




 中には赤ネクタイの生徒が立っていた。生徒会長だ。



 その生徒が立っているのは私の席の隣。そしてその席には先程まで見ていた攻略本が出しっぱなしだ。


「あ…、保健室空けていたんだけど、体調不良か何かかな?」


「ねぇ、先生これなんですか?」


 生徒の手には攻略本。そしてすごい笑顔。怖い。あれだな、本当にアニメみたいに鳥肌ってたつんだな。足から痺れるような感覚が来たよ。初だよ。こんな初体験いらない。




「生徒から取り上げた本だよ。」



 声が震える。え、何に怖がってるんだろう。圧?この笑顔の圧か?


「違うよね。確かに筆跡が違うけど、後から付け足した文字は先生のだよね。」


 何この生徒筆跡鑑定とかできる能力持ってるのか?確かに私は書き込みましたよ。はい。どいつがヒロインちゃんが派閥でどいつが悪女ちゃんが派閥かとか、イベントによれば怪我が大きいものとかあるから先に対策しとくとか忘れないように付箋とか貼りましたよ。


 これ、言い逃れした方がいいかな?それとも言うか?こいつはどっちの派閥だ?


 悩んでいると生徒会長が口を開く。


「俺はどっちの派閥でもないよ」


 サイコメトラーかな?君は。あと笑顔怖いからやめろ、マジで。


「はぁー、話せばいいのかな?」


「そうだね」


「そこに腰かけて待っててください。今から水入れますから。」


 負けた。生徒会長様には勝てませんよ。なんせ学園長の息子様ですから。


 保健室の扉にかけてある板を不在にしておく。


 私は水を用意し向かいのソファーに腰掛けた。面接みたいだ。



 ◇


「先生の話によると、この本の内容の乙女ゲームの世界で、清原と五十嵐は両者ともここがゲームの世界だと思っていると。」


 ちなみに五十嵐というのは悪女ちゃんの事だ。「五十嵐 杏 」と言うらしい。


「そういうことになる。先程も言ったが、私にゲームの知識はない。したがって、今朝、清原にこの本を書いてもらったんだ。」


 生徒会長「西条 朱凰」は面白そうに攻略本を見ている。ゲームの西条は全て思い通りになることに退屈している所をヒロインが他の男子に好かれていることに興味を持って喋っていると、思い通りの言葉を返さないヒロインを気になって好きになるらしい。

  攻略するには3択の選択肢の中から朱凰から選ぶように向けられていない選択肢をするとハッピーエンド、それ以外はノーマル。八割外すと不敬の罪によりバッドエンドになる。やはりヒロインの行動は不敬だよな。このボイスレコーダー役に立つかもしれないな。ちなみにボイレコは今も起動し中。


「ふーん。先生ラッキーしたんだね。」


「どういうことだ?」


「さっき、宮澤先生を呼んだの先生だよね?あれがなかったら清原と五十嵐を守るあの生徒会メンバーを喧嘩してたよ。違うな、喧嘩するようにしむけてたのに、かな。」


「は…?」


「あの時間帯は先生が循環してないからね。喧嘩するように色々囁いたから上手く行けばあいつらを生徒会から降ろさせられるかなと思ってたんだけどね。」


「なんのためにそこまでしたいんだ?」


 意味がわからない。


「使い物にならないんだよ。生徒会にあんな女2人も連れてきて。そのせいで仕事が山積みだよ。」


「あーそれはご愁傷さま」


「それで裏で操って喧嘩するようにしむけて、特等席の保健室で見ようと思ったらこの本を見つけてね。でもそのおかげで五十嵐の行動理由がわかったよ。」


「行動?」


「ああ、この本に書いてあるとおり、俺は退屈してたんだよね。それを知ってか五十嵐は暇さえあれば俺を遊びに誘うんだよね。、正直鬱陶しかったな。でもこの本を見てたら五十嵐の行動理由がわかったよ。公正させたかったのかな?知ったら尚その善人ずらが気に入らないな」


 不気味な笑みだ。こいつ怒らせたらヤバいやつだ。とことんまで陥れられる感じがする。


「それで、お前は清原ともどうせ接触したんだろ?どうだったんだ?」


「そうだね、なんでも青山が女神だと言っていたから気になって見に行ったんだよ。そしたらそこら辺にいる肉食の女と何ら変わらなかったね。」


「め、女神って呼ばれてるのか、私は天女の噂は聞いたが、女神は知らなかったな。」


 昨日来た女子生徒が言っていた。


「それは間違いじゃないね。天女は五十嵐で、女子男子ともに好かれてるよ。どちらかと言うと女子の方が多いかもね。清原は女神だがこれは圧倒的に男子が多いね。」


「そうか」


 さて、気になることは全部話したぞ。さぁ、会話が続かないな。おかえり願いたいな。


「先生はさ、なんでアレ止めたの?」


 アレというのは清原軍団と五十嵐軍団と対立のことだろうか。


「それはもちろん自分の平穏の為だよ。」


「別に先生には関係ないよね?」


「1度関わったら関係があるんだ。火の粉が飛んでくるかもしれないだろ?」


 ああ、苦しいかな。理由なんて聞かなくていいんだよ。私のため。平穏のため。それは間違っていないんだから。


「ふーん。じゃぁ協力してよ。」


「協力?」


 なんだろう嫌な予感しかしないな。…このセリフ前も言ったな。嫌な予感は当たったな。今回は当たらないで欲しいな。清原も協力云々言ってきたな。協力とは恐ろしい言葉だな。


「うんそうだよ。僕の楽しい暇つぶしの為、先生の平穏の為、協力しようじゃないか。」


 ああ、楽しいおもちゃを見つけたように手をさして出してくる。やめて欲しい。関わりたくないんだ。ひっそりさせて欲しい。


「そうだね、平穏は大事だ。」


 私は西条の手を取った。

 このままこいつを野放しにしていたらまた裏で何しでかすかわからない。協力したくないがせざる得ない。


 私はこの先に待つ未来を思い浮かべながらコーヒーを片手にため息をついた。

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