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何故消した!

怪獣撃退の直後、カナメとイーヌはすぐに現場を離れた。遅れて到着した自衛隊や警察との接触をさけたかったからである。


乗り捨てられていた二輪自動車バイクというらしいを拝借し、西に向けて移動。そして現在は都内のホテルの一室に入っていた。ゆくゆくは本格的な居住地を用意する必要があるが、ひとまず今夜は仕方がない。


「わっふ。見てくれ、カナメ」


 シャワーを浴びて浴室から出てきたカナメに、イーヌが声をかけた。彼は先ほどから操作していた端末のディスプレイを前足で示している。


「どうした」

「これはさっきの現場、怪獣が来襲したエリアで展開させていた小型衛星からの映像さ」


 どうやら、カナメの戦闘中にイーヌの方は情報集に励んでいたらしい。ディスプレイには、様々な地点・角度から怪獣来襲時を撮影した動画が映っていた。


 怪獣が暴れ、ビルが破壊され、火の手が上がり、人々が逃げ惑う、そんな様子だ。


「……あの時の映像か。記録していたとは、さすがに手際がいいな。助かる」

「いいさ。それよりも……ほら、ここだ」


 イーヌが動画を一時停止した。そこには、奇妙なものが見えた。


 人型サイズの何か。全身が白い外骨格で包まれたような何者かが、市民の避難路をふさいでいた瓦礫を殴りつけて粉砕しているように見える。


「!? ……なんだこれは……?」

「それから、ここも」


 イーヌが画像を切り替えた。こちらに見えるのは二人の少女だ。およそ現場に似つかわしくないヒラヒラした衣服を着ている少女たちは手のひらからエネルギー波を放出し、燃え広がる炎を消し飛ばしている。


「地球人にはこんな能力があるのか? ……いや、そんなはずは……」


 生身でコンクリート破壊する拳、炎を消し飛ばすエネルギー。そんな生物は、広い宇宙の情報が集まる帝国ですら聞いたことがない。


「わっふ。実に不思議だ。他にも何名か、奇妙な連中の姿を捉えた」


 イーヌは次々と画面を切り替えて見せた。全長15メートルほどのロボット、それぞれ異なるカラーのアーマーを纏った五人組、タイツを着た筋肉隆々の男。彼らは、いずれもあの災害現場にあって、市民たちを救う動きを見せていた。


倒壊したビルを下で支え、怪獣が吐いた炎に対してバリアを張り、動けない市民を抱えて空を飛んでいる。

この連中は、明らかに通常の地球人が持ちうる能力を逸脱している。いや、地球の軍隊の兵装をも超えているかもしれない。そんな連中があの突発的に発生した災害にそれぞれ個別に対応している。


「何者だ。コイツらは」

「それがわかれば苦労はしないさ」


 イーヌはデスクの上で伏せの大勢を取り、目を閉じた。イーヌにとっても想定外ということだろう。


ブラックダガーンや怪獣もそうだが、未知の戦力を地球が有していたという事実は無視できるものではない。銀河帝国による侵略は3年後に予定されているが、その際の障害になる可能性がある。


 だが……。


「ふっ、問題ない。俺たちが先遣隊としてこの星にやってきた意義が出来たというだけだ」


 カナメはイーヌの頭に手を置き、そう告げた。


文明レベルも軍事力も低い未開の惑星、それが帝国の認識していた地球だ。カナメも含め、『舐めていた』と言えるかもしれない。あのまま侵略戦争を仕掛けて居れば思わぬ反撃を受けた可能性もある。


だが先駆けてこの惑星にやってきたカナメがそうはさせない。調査兵士として、隠されていたこの星の戦力を丸裸にしておく。可能なら取り込んでしまうなり滅ぼしておくのもよいだろう。それは軍人としてのカナメの立身出世にもつながるはずだ。


「わっふ。さすがカナメだ。そんな君に朗報があるぜ」

「聞かせてくれ」


「さっきの映像に映っていた一人に超小型スパイデバイスを飛ばしておいた。今も監視している」


 イーヌはそう言うと、また画面を切り替えた。学生服姿の少女が映っていた。

 華奢な体、肩までの長さの亜麻色の髪、快活そうな表情。


 彼女がいる場所は、おそらくは自宅だ。両親らしき男女と会話したのち、自宅内のどこかに移動中のようだ。


「これは誰だ?」


「あれ? なんか雰囲気がちょっと違ってるね。……髪の色も違うし、長さも違う。でも、間違いないぞ。これは変な服を着てエネルギー波を撃っていた二人組の少女のうちの一人さ」


「……なるほど。頭髪の変化はわからないが、作戦行動時に特殊な衣服を纏う兵士なのかもしれないな」


 ディスプレイをじっと見つめるカナメとイーヌ。画像の中の少女は、なにやら鼻歌を歌いながら服を脱ぎだした。


「わっふ!! そうか! ここは彼女の自宅の浴室のようだぞ!!!」


 プツン。


「な、何故消したカナメ!! これは警戒対象の監視という僕たちの任務であり……!!」


「帝国の人権法に反している」


「いや、でもほら、ここはまだ帝国領でないぜ?」


「いずれはそうなる」


「……わっふ」


 イーヌは不満そうに前足で顔をこすると、気を取り直して言葉を続けた。


「と、とにかく。あの女の子の情報はもう調べてある。近隣の高校、つまり教育施設の学生だ。名前は一ノ瀬千歳。16歳だ」


「了解」


 そこまで分かれば十分だ。元々、カナメは地球の調査において計画していたことがあるが、この少女の調査はそのついでに行いやすい。


「当面の行動プランは決まった。イーヌ、準備を頼む」

「わっふ」


 帝国の情報工学を学んだイーヌの力をもってすれば、地球での戸籍の偽造や様々な法的手続きは容易い。現地での活動資金は入手済み。調査には、近日中には入ることが出来るだろう。



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