頑張る男の子
ほぼ会話だけ。
時間割を見たら、次の授業が歴史で、そのさらに次が体育だった。
俺はサボりを即決して、サボりスポット屋上にやってきた。
屋上には先客がいた。
「あ、関君。サボり?」
笑顔でそう聞いてきたのは屋上サボり仲間の和菜ちゃんだった。
部活仲間の山下と同じ6組の子だ。
彼女とは同じクラスになった事はなくて、ここ以外で会う機会も無い。
俺のクラスが歴史→体育コンボの時間割の時、6組は体育→数学コンボになるらしい。
体育はだるいし数学は嫌い、と和菜ちゃんは言う。
それで、サボる時間がかぶる事が多くなって、最近はすっかり仲良しさんだ。
和菜ちゃんは美人で髪が綺麗で笑顔がすごく可愛い。
俺としてはそろそろデートにでも誘いたいところなんだけど、なかなか隙が無い。
「君に会いたくなって来ちゃった」
「そうなんだ?」
くすくすと笑う和菜ちゃんは本当に美人だ。
校庭からピッって音が鳴った。
あ、そっか、6組が体育をやってるんだ。
和菜ちゃんは校庭をじっと見てる。
「ねぇ、関君?」
「ん?なになに?」
校庭を見ながら、和菜ちゃんは続ける。
「関君はどうして体育出ないの?」
「えー、そりゃ面倒くさいし疲れるのは部活だけで充分だからさ」
「それってさ、もったいないよ」
「へ?なんで?」
和菜ちゃんはやっぱり校庭を見たまま。
何を見てるのかちょっと気になって手すりから身を乗り出した。
徒競走のタイムの測定をやってるっぽい。
山下がこれから走ろうとしてるのが見えた。
「例えばさ」
「うん」
体育教師が笛をピッ、と吹くと、山下が走り出した。
真面目に走ってるなー。早い早い。
「たとえば、たまたま校庭で体育してるときに、たまたま屋上でサボってる女子がいて、たまたまその子が校庭を見てて、汗だくで走ってる男子の姿にたまたま心を奪われちゃうって事もあるわけですよ」
「・・・へ?」
「私ね、目がすっごくいいんだ。ここからでもおでこの汗見えるくらい」
「・・・へ!?」
和菜ちゃんの色白のほっぺに、赤みが差してる。
目線の先には、汗だくで走ってる山下。
「えぇえぇええ!?!?」
にこ、っと和菜ちゃんが笑う。
ああ、なんて可愛いんだろう。
次の体育の時間には俺も授業に出て、汗だくで走ろうと決意した。
自慢の視力で俺の雄姿を見ててくれるんでしょ?
和菜ちゃんは汗フェチ。