私、冒険者ギルドに就職しました!
「ハンカチ持って、ちり紙も持って……うん、忘れ物は無いかな?」
皆さん、こんにちは。私、セシリア・フィルダーと申します。
聞いてくださいよ!私、今日から冒険者ギルドに就職が決まったんです!
週休は二日あって、ボーナスも年二回で昇給も有り。有給もあるし、保険や福利厚生もバッチリなんです!
冒険者ギルドには『人事』『総務』『経理』、冒険者の持ち込む素材に値段を付ける『査定課』に華の『受付課』があるんです!
まぁ…人気のない『討伐課』っていうのもあるんですけどね……そして私は!なんと華の『受付課』に配属されることになりました!
Sランクのイケメンな冒険者とあんなことやこんなラブロマンスしちゃったり……
はっ!いけないいけない。でも、書類選考とか面接とか本当に長かったんですよぉ……
でも、そんな辛い日々もお終いです!今日から私、冒険者ギルドで受付嬢します!
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「え?」
「え?じゃなくてですね……あなたの配属は受付課じゃなくて討伐課です」
私の頭の中は疑問符で一杯になるが負けじと抗議を繰り返す。
「だって私、受付課って書類届きましたよ!ほら!」
「えー?どれどれ……?」
書類をまじまじと見つめる受付のおじさん。
なんでそんなめんどくさそうなのよ!困ってるのはこっちだっての!
「あ、あー……ここです、ここ。ここに書いてあるでしょ?」
書類を指差して私に差し出してくるおじさん。
えー?なになに?
もし、他の部署に何らかの理由によって欠員が出た場合、他の部署に異動となっても異論は申し立てられませんんんん????
「ちなみに受付課から討伐課への異動の通達は今朝届いてましたね。通達が遅れた事に関しては謝罪しましょう」
ム カ つ く !
何なのよ!あのおじさん!最後は勝ち誇ったような顔してぇ!
うぎぎぎぎぃ、と歯を食いしばるがそれで何かが変わる訳ではないと気付き、すぐに止めた。
「はぁ……よりによって討伐課かぁ……」
『討伐課』
それは冒険者ギルドにおいて異色の部署である。
冒険者ギルドでは内勤部署の『受付課』『査定課』などが殆どを構成しているが、『討伐課』は冒険者ギルドにおいて唯一の外勤部署である。
勤務内容は、冒険者が討伐に失敗したモンスターを討伐すること。
冒険者の中には、自身の身の丈に合わない討伐依頼を受注する者がいる。そんな人は高確率で依頼に失敗する。
そうすると依頼者への報告、失敗した者達への処分、依頼内容にあった冒険者への斡旋等の業務が発生し、手間も時間も人員も割かれてしまう。
何よりも危険なモンスターの討伐依頼は急を要する場合が殆どで、あまり長くは時間を掛けていられない。
そのような事情があってか、この部署は設立された。
しかも、この部署はモンスターを討伐出来る『力量』が必要になるのだ。
(なのに、なんで私が討伐課なのよぉ……)
自慢ではないが、私はモンスターを討伐した事など無い。幼少の頃に出会ったホーンラビットと呼ばれる食用になる兎のモンスターに泣かされて家に帰った事もある。
ちなみにホーンラビットは狩猟を一度でもした事のある者なら、武器を持たずに片手で討伐出来るくらいには弱い。
『討伐課』と書かれた部屋の前で歩みを止める。
よし!冒険者ギルドの職員になれたんだから、どんな部署でも頑張らなきゃ!
気合いを入れて扉をノック。ドアノブを回して室内に入ってから一言。
「本日から討伐課に配属になりました、セシリア・フィルダーです!よろしくお願いします!」






