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旧第4話

「オリエよ、そなたを我が一族から追放する。(しのび)にふさわしくない召喚獣を得た者を一族に置いておくわけにはいかぬのだ。これも厳しき忍の掟……悪く思うな」


「あんまりでござる! 誰が『アーススライム』は忍にふさわしくないと決めたのでござるか!?」


「カチュア、ごめんね。何とかパーティーに残してあげたかったんだけど、召喚獣が『シャインスライム』じゃ、ほかのみんなを説得できなかったのよ」


「……仕方ない」


「お前は追放だキャサリン。今まではその性格の悪さにも目をつぶってきたが、よりにもよってスライムしか召喚できない召喚士(サモナー)なんぞに転職したヤツをパーティーに入れておくメリットは何も無いからな」


「ヲーッホッホッホ! ふざけたことをおっしゃらないでくださる!? この貴重な『ゴールドスライム』である『ソレイユ』の価値を理解できない愚物どもの仲間でいることなど、わたくしの方から願い下げですわ!!」


「なあ、クミコ、本当にすまないと思っているんだが、これ以上黒魔法の使い手は必要ないんだ。それに『ダークスライム』なんて不気味な召喚獣がついてきちまったんで、ほかの連中も怖がっていてな……わかってくれよ、頼む!」


「いや……(われ)を追放するなどとは絶対に許さぬ……恨む……憎む……呪う……」


 目の前で繰り広げられている、どこかで見たような光景の連発に、俺は思わずアイナたちに向かって尋ねていた。


「なあ、思った以上にスライム召喚士(サモナー)って多いのかな?」


「いえ、これは明らかに異常よ」


「ともかく、彼女たちにも声をかけてみよう」


「わかりましたですぅ」


 先ほど仲間に加えたばかりのウェルチも一緒に、俺たちは手分けして四人のスライム召喚士(サモナー)を勧誘することにした。


 そして、転職(ジョブチェンジ)の神殿にほど近い「冒険者の宿」の酒場兼食堂の一角を占領して、それぞれ自己紹介しようということになったワケだ。こうした冒険者向けの宿屋は大きな街なら必ず存在して、モンスター退治から帰ってきた冒険者の(いこ)いの場となっている。


「俺はリョウ。十七歳だ。元魔法戦士だから、近接戦闘のスキルもあるし、白魔法も黒魔法も初歩的なものは使える。相棒はノーマルスライムのスーラだ」


「あたしはアイナ。同じく十七歳。元精霊使い(シャーマン)よ。精霊魔法で攻撃、回復、補助ができるほかに弓での支援もできるわ。私のルージュは見てのとおり火属性のフレアスライムよ」


「ボクはイリス。十八歳の元剣士さ。どちらかというと素早さを生かした近接戦闘が得意だね。戦闘系のスキルは多いけど、魔法は自分にかける身体強化系しか使えない。召喚獣は風属性のエアロスライム。名前はウインドだよ」


「わたしはウェルチと申しますぅ。十七歳ですぅ。元は僧侶でしたぁ。白魔法は得意で状態異常は全部治せますし、メイスで戦って自分を守ることくらいならできますぅ。この『マリン』ちゃんは水属性の『アクアスライム』ですぅ」


 このウェルチは脱力系のしゃべり方をする子で、小柄な体格やかわいらしい童顔とあいまって子供みたいに見えるけど、何気に胸は大きかったりする。状態異常を治す回復魔法を全部おぼえているのは非常にはありがたい。


 次に自己紹介をしたのは、忍者装束(しょうぞく)と呼ばれる特殊な服を着込んだ少女だった。服の胸元からは薄手の鎖帷子(くさりかたびら)が見えている。ただ、この忍者装束が、俺の知っている地味な色じゃなくて、ド派手なピンク色な上に超ミニスカートなんだけど。おまけに、髪の毛まで同じようなピンク色なのをツインテールという左右に結った髪型にしている。こんな髪色があるなんて聞いたことがないので染めているのかな。目の色は薄い青だ。この子もかなりの美少女だったりする。


「拙者はオリエと申す。十五歳の若輩者でござる。元は忍者でござった。罠を見つけたり外したりするのは得意でござる。忍術という気配を消したり姿を隠したりするスキルを多く持っているので奇襲戦も得意でござる。素早さを生かした小刀による近接戦と、手裏剣という特殊な投げナイフを使った中距離戦ができもうす。召喚するのは土属性のアーススライムで、名前は『クレイ』でござる」


 それを聞いて、俺は思わず感嘆の言葉をもらしていた。


「凄いな、十五歳で上級職の『忍者』だったのか」


 忍者というのは、「密偵(スカウト)」と同じように罠を見抜いたり外したり、扉や宝箱の鍵を開けたりすることができる職業(ジョブ)だ。ただ、下級職である密偵(スカウト)があまり戦闘には向かないのに対して、忍者は近接戦闘や中距離支援も可能な戦闘力を持っている上級職なんだ。


 それから、十五歳の「成人の儀式」のときに就くことができる職業(ジョブ)は、その時点の本人のステータスの値によって選ぶことができる。「力」が強ければ「戦士」になることができるし、「IQ」が高ければ「魔法使い」になることができる。そして「力」と「素早さ」の値が両方高ければイリスみたいに「剣士」になれるし、俺みたいに「力」「IQ」「EQ」の値がバランス良く高ければ「魔法戦士」を選ぶこともできる。


 そして、もし相当にステータスの値が高ければ、最初から上級職に就くこともできるんだ。それだけのステータス値を持っているのは、かなり(まれ)なんだけど、いないわけじゃない。オリエはそういうエリートだったんだろう。


 そう思っていたんだが、オリエが事情を説明してくれた。


「拙者は代々忍者を輩出してきた一族の出身でござる。幼少期から忍者になるために鍛えられていたので『成人の儀』で忍者の職業(ジョブ)を得ることができたのでござる」


「ああ、なるほど」


 最初から忍者向きのステータスになるように育てられてきたというわけなのか。


「ただ、拙者の一族の掟では、忍者としてある程度経験を積んだら一度は召喚士(サモナー)転職(ジョブチェンジ)して忍者にふさわしい召喚獣を得ることになっているのでござる。拙者は一族の高レベルパーティーに参加できたので経験値を稼ぐことができ、一年も経たずに転職(ジョブチェンジ)を認められたのでござる。そこで召喚士(サモナー)に転職したのでござるが、ガマカエルや鷲などの忍者にふさわしい召喚獣ではなくアーススライムになってしまったので、一族を追放されてしまったのでござる」


 そう言ってうつむき、歯を食いしばって悔しさを噛み締めているオリエ。何と声をかけて慰めようかと思っていると、彼女はガバッと顔を起こして、目の前のテーブル上でふにょんふにょんとうごめいている黄透明のスライムを指さしながら大声で叫んだ。


「でも、アーススライムが忍者にふさわしくないというのは偏見でござる! 拙者は何としても、このクレイを鍛え上げてアーススライムだって忍者の召喚獣にふさわしいことを証明して見せるでござる!!」


「その意気だ! 俺たちも気持ちは同じだ!!」


 オリエの叫びに賛同した俺の言葉に、ほかの六人も大きくうなずく。みんな気持ちは一緒なんだな。


 次に自己紹介したのは、鋼鉄の全身鎧(フルプレート)に身を固めた少女だった。兜は外して顔をさらしているのだが、ショートカットの銀髪に、瞳の色も銀色なので、フルプレートと相まって妙に硬質的な印象を受ける。顔立ちも整っているのだが、何か人形的な雰囲気があるんだよなあ。


「私はカチュア。十七歳。前の職業(ジョブ)は「騎士」。守りは得意。このビアンカは光属性のシャインスライム」


 ……何か、抑揚の少ない調子で最低限のことしか言わないので、あまり感情が感じられないんだよな。まあ、元は防御力の高い騎士をやっていたというから前衛としては頼りになりそうだし、連れているシャインスライムはかなり珍しい種類のスライムだ。ほかのスライムが透明なのにシャインスライムは透明度が低い純白なんだよな。まあ、珍しいけど弱いことに変わりはないんだが。


 次に口を開いたのは、かなりの長身で金髪碧眼のかなり彫りの深い美人さんだった。顔だけじゃなくて体の方もボン、キュッ、ボンって感じでメリハリが凄い。何でそんなことがわかるかというと、結構ゴージャスながら体にぴったりと張り付く薄手のドレスを着ているからだ。こんな格好で冒険者やってるって、実は相当に変な性格かもしれない。しかも、そのロングヘアを縦ロールにしてるんだから、実はどこぞのお嬢様だったりするんじゃなかろうか。


「次はあたくしの番ね、ヲーッホッホッホッホ! あたくしの名前はキャサリン。花も恥じらう十八歳でしてよ。あなたたちには特別にキャシーと呼ぶことを許してさしあげてもよろしくってよ! 元は弓射手(アーチャー)だから支援射撃はあたくしにお任せなさい! そして、あたくしのソレイユをご覧なさい。この貴重な金属製のゴールドスライムを召喚獣として連れている召喚士(サモナー)なんて、あたくし以外に見たことがありまして?」


 うん、やっぱり少し変かもしれない。それにしても、この人はかなり自己主張が激しいなあ。だけど、確かにゴールドスライムは非常に貴重だ。その金色(こんじき)に輝く体は、軟体でこそあるものの、金属みたいな質感で大抵の武器をはね返し、ほとんどダメージを与えることができない。そして、動きが非常に素早く、臆病で逃げ足も速いので、スライム種にしては倒すのが難しいんだ。ただ、戦闘能力の低さは変わらないけどね。それを召喚してるというのは聞いたことがない。


 などと思っていたら、最後のひとりが自己紹介をはじめた。こちらは見た目からして魔術師風だなあ。長い黒髪の上に黒い三角帽子をかぶり、全身も黒いローブを着込んでいて体型はよくわからないが、あまり胸は大きくなさそうだ。手には、ねじくれた形の木の杖を持っており、顔にはレンズが分厚い丸眼鏡をかけていて目元がよく見えない。この丸眼鏡は「密偵の眼鏡(スカウトグラス)」だな。密偵の片眼鏡(スカウトモノクル)より旧式で、両目で情報を示すようになっているし、音声は出ない仕組みだ。密偵の片眼鏡(スカウトモノクル)の音声機能は仲間同士の連絡にも使うことがあるので、その点は不便かもしれない。


「ヒッヒッヒッヒッヒ……珍しいというなら我の『ノワール』も希少種……闇属性のダークスライム……。このノワールの(あるじ)こそ、我クミコなり……。(よわい)十七にして魔術師のおぼえられる黒魔法を極めし者……。魔術使えぬときも侮ることなかれ……。我、毒針を放つ吹き矢も得手(えて)とする者なり……ヒッヒッヒッヒ……」


 うわあ、これはキャシー以上に強烈な性格だわ。確かに彼女の前でふにょんふにょんしている黒透明のダークスライムも(レア)なモンスターだし、いくら下級職である魔術師がおぼえられる黒魔法は中級までに限定されているとは言っても、それを二年くらいの期間で全部習得できるというのは大したことだと思う。とはいえ、この性格だと前のパーティーでも持て余されたんじゃないだろうか。


 ……なんてことを思いながらクミコの顔を見ていたら、彼女も俺の方を見返すと、丸眼鏡を外す。おや、眼鏡を外したら意外に美人じゃないか。普通に密偵の片眼鏡(スカウトモノクル)を使えばいいのに、もったいない……なんて思っていると、彼女が黒い目を光らせて俺に聞いてきた。


「ところでリョウよ、そなたも我と同じく黒髪黒目だが、もしかして異世界ニホン人の子孫なのか?」


『スライムしか召喚できないのでパーティーを追放されたけど同じ境遇の美少女たちと協力したら無敵スライムが生まれて一発逆転できた上にハーレム状態になっちゃったんですけど』

https://ncode.syosetu.com/n3239ff/

の試作版です。

エッセイで正規版と比較していただくための掲載ですので、感想、評価などは受け付けておりません。

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