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5/5

フェイズ5

 

「おらおらおらおらっ!?」


 戦斧を乱暴に振り回しながら俺を追い詰めるマッチョゴリラ。

 肩口くらいまで長さのある茂みに逃げ込もうとそれを刈りながら執拗に攻めてくる。

 芝刈りでもやってるつもりかあのゴリラは……。


 七星ゆう:ライフカード23/60


 だいぶ削られたな……。

 ディスプレイに表示される自身のライフを見て、どのくらいの猶予があるのかを予測する。

 ゴリラは無傷。

 最初に召喚した精霊も健在で、俺は既にCランクを5体は失っている。

 どうやらブレイドリンクでは、精霊が消滅した際にドローする権利が与えられるらしくマッチョゴリラはこのゲーム中一度も手札を補充していない。


 そもそもまだあの犬二体しか召喚していないよな?

 追撃するにしてももっと精霊を召喚した方が効率良いのに、どうして?


「ガルム!」


 思考を巡らせる俺に、黒犬が突進する。


「おっと、あぶねっ!」


 最初と比べ勢いが衰えているため、ひらりと簡単に躱せてしまう。

 勢い余り黒犬が大木に激突する。

 口元からだらだらと涎を垂らし、短く荒い呼吸をしている。

 疲弊している?

 そういえばカードの情報に体力というステータス項目があったよな。

 もしかしていまなら!


漆黒の華(ダーク・ローズ)クローズナイトを召喚!」


 手札にある闇色の鎧を纏った騎士を召喚する!


漆黒の華(ダーク・ローズ)クローズナイト】

 ランク:C

 属性:闇

 攻撃:中

 防御:中

 体力:小

 スピード:小


「いけっ!」


 見よう見まねで黒騎士に指示する。

 命令の意を示すとあとはオートで動いてくれる。

 クローズナイトは重い甲冑を揺らしながらゆっくりと敵の黒犬へと接近すると、背負った大剣で一気に斬り払う。

 既に体力が尽きている黒犬に剣を避ける手段はない。

 胴体から真っ二つにされ、光の粒子となり消滅する。


『ロストペナルティによりライフカードを1枚失います』


 このゲーム中初めてマッチョゴリラのクロノギアから機械ボイスが発声された。


 マッチョゴリラ:ライフカード59/60


 ライフカードが削られたことでディスプレイに情報が表示される。


「さすがに体力の限界か」


 ドローチャンスが相手にも訪れる。

 忌々しそうな表情でデッキからカードを引くゴリラ。


「ちっ、運悪りぃな。狩猟犬バウント・ドッグワードウルフを召喚」


狩猟犬バウント・ドッグワードウルフ】

 ランク:C

 属性:闇

 攻撃:中

 防御:小

 体力:小

 スピード:中


 新たにご登場したのは、白頭狼と酷似した狼だった。

 攻撃とスピード重視のステータスをした精霊か……。


「やれっ、テメェら!」


 動きの鈍いクローズナイトがターゲットにされる。

 ゴリラの指示で白狼二頭が一斉に駆け出し、黒騎士へと噛みつく。

 こちらもただでやられる義理はないので、大剣を振るって抵抗する。

 だが、俺が黒騎士へと指示するためにゴリラから目を離した一瞬の隙に……。


「真上がお留守だぜ、ごらぁ!」


 戦斧を携え飛びかかってきたゴリラが俺を押しつぶす。

 回避も間に合わず、まともに斧で斬られてしまう。


『プレイヤーへのダメージを判定、ライフカードを削ります』


 七星ゆう:ライフカード15/60


 かなりの有効打を貰ってしまったらしくごっそりとライフカードが削られる。

 だが、痛手を被ったのはなにも俺だけではなかったらしい。

 地面をえぐる巨大戦斧が、刃先の部分からひび割れ、バラバラに砕けて四散する。

 それとほぼ同時に俺の黒騎士とゴリラの狼が力尽き、消滅する。


『ロストペナルティによりライフカードを1枚失います』


『ロストペナルティによりライフカードを3枚失います』


 七星ゆう:ライフカード14/60

 マッチョゴリラ:ライフカード56/60


 なるほど武器も精霊同様、耐久値がなくなると破壊されペナルティを取られるのか。

 フィールドに精霊も武器もなくなり、スタートラインに戻る。

 精霊の召喚の仕方に操り方、武器の利用方法に相手のライフカードの削り方、あとはその他もろもろのルールと、10分程ボコボコにされてようやく把握した。


「テメェ、もうちょっと俺様を楽しませろよ。せっかく勝負してやってんのに、こうも一方的だと張り合いがなくて退屈なんだよ」


 ブーブー文句を垂れるゴリラ。

 あぁ、いいぜ。見せてやる。


「悪りぃな緩慢にゲームを進めちまって。だけど、おかげ様で粗方このブレイドリンクのルールは理解できた」


 ニヒル、と不気味に微笑みながらゴリラを睨む。

 沸々と感情の奥から熱いものが湧いてくる。

 それはやがて俺の全身を包み、極限までゲームセンスを研ぎ澄ます!


「悪いな、こっから先は最強カードゲーマーのオレのターンだ!!」


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