フェイズ3
「うおぉぉぉっ! すっげぇ!?」
周囲の景色が一瞬にして緑色の草原へと変わった!
俺が引きこもっている間に技術はここまで進化したのか!?
草土を踏む感触まで本物そっくりだ!
「おいっ、なに飛び跳ねている?」
「んっ、わりぃわりぃ。そんじゃさっさと先行後攻決めてゲームを始めようか」
「先行、後攻? ブレイドリンクにはんなもんねぇよ」
「えっ、まじで!?」
おいおい、カードゲームなのに先行、後攻ないとか……どうやってゲームを進行するんだよ?
「いいからカードを引け。そうしねぇとゲームが始まねぇんだよ」
既にゴリマッチョは5枚のカードを手に握っていた。
なるほど、ブレイドリンクの初期手札は5枚なのか。
俺の相手に倣って5枚のカードをデッキから引く。
え~と俺の初手は……っても初ゲームだから良いのか悪いの判断つかねぇな。
いつの間にかポケットに入っていたカードと背面が同じという情報以外なにもわからない。
記載されている情報は、カードの名称にその横にあるA、B、Cという位分け(ちなみに初手はCが3枚にA、Bが1枚ずつ)、それに中央にはでかでかとイラストが描かれており、その下にはカードのテキストが表示されている。
カード単体のスペックは攻撃、防御、体力、スピードの4種類が打ち分けられており、それぞれ強、中、弱という3パターンで区分されている。
攻撃とか数値で具体的に表記されていないのか……。
それに、俺の手札にあるカードは全部外枠が黒で統一されているけど、これってそのカード単体の属性かなにかか?
「俺様から行くぜ! 狩猟犬ガルムと白頭狼を召喚!」
マッチョゴリラが手札2枚をクロノギアのディスプレイ画面に叩きつける。
すると、彼から少し離れたところに魔法陣が展開し、黒と白の犬が召喚される!
犬といっても俺の知っているものの二倍の体躯を誇り、立派な前足に長い胴体、真っ赤な眼光に巨大な顎、と人間により改造された魔犬みたいな見た目をしていた。
チャーミングさの欠片もない、魔物そのものだ。
「っておい、初っ端から2体同時召喚かよ! 遊●王でも通常召喚は1ターンに1回しかできないのに……」
と、やつが魔犬を召喚すると同時に俺のクロノギアが作動し、俺の目線の高さにスライドを映し出す。
そこには例の魔犬たちのカード情報が記載されていた。
【狩猟犬ガルム】
ランク:C
属性:闇
攻撃:中
防御:弱
体力:中
スピード:中
【狩猟犬白頭狼】
ランク:C
属性:闇
攻撃:弱
防御:弱
体力:弱
スピード:強
なるほど、カードの詳細はこうやって確認するんだな。
黒い犬がガルムで、白いのが白頭狼か。
カードに描かれたイラストと実際に登場した本物とを照合する。
さて、相手はどうでる?
「……」
「……」
ゴリマッチョの出方を窺うこと数分。
召喚された魔犬も静かにお座りをして待機し、一向に動く様子をみせない。
「って、テメェさっさと精霊を召喚しやがれ! ゲームが始まんねぇだろ!」
またしてもゴリマッチョがキレた。
ほんと短気だな、あいつ。
「えっ、なに俺も召喚しないといけないの?」
「当たり前だ!」
そうなのか……なら、とりあえずランクAのこいつでも召喚しておくか。
ゴリマッチョがやったように手札のカード1枚をディスプレイに叩きつける。
だが、
「あれ? 召喚されない?」
ブーッ、という機械音と共に弾き返されてしまい精霊を召喚できない。
「おいっ、テメェ、なにをやっているんだ! そいつはAランクの精霊だろ! Bランク以上の精霊を2体コストにしなくちゃ召喚できねぇのも知らないのか!!」
「あ~なるほど! このゲームにもコストという概念は存在するのか!」
「テメェ、舐めてるだろ……もしくはブレイドリンクの知らない初心者か?」
「正解は後者かな」
俺は手札にあったCランク精霊を召喚しながら答える。
「でも、安心しな。俺は最強のカードゲーマーだからよ。退屈させるような真似はしないから」
さぁて、こっからゲームの本番だ!