フェイズ2
世界が白く染まり、目を開けると俺は、なぜか薄暗い路地に立っていた。
「ここ、は?」
辺りを見回すも場所を特定するヒントはない。
しかも部屋にいたはずなのに、いつの間にか靴まで履いている。
「う~ん、どうしよう……」
シンプルに迷子だ。
いや、そもそも目を開けたら一瞬で外にいること事態おかしなことなのだが。
「ったく、どうしたものかなぁ」
まずは所持品を確認しようとズボンのポケットをまさぐる。
「なんだこれ? カード?」
残念ながら金銭や食品の類のものは発見できなかったが、代わりにいれた覚えのない一枚のカードが出てきた。
表面は真っ白な白紙で、裏面にはトレカにありがちなゲームイメージを表す紋様のようなものが描かれている。
「剣と妖精か? この絵は……」
まさかこれはものすごいレアカードで、売って生活の足しにしろということか!
いや、白紙な時点で価値はないな。
「くそっ、本気でどうすっかな」
無難に人に尋ねるか……。
引きニートな俺だが、それにふさわしくなく会話術は達者だ。
陽那からも無駄にスペックのある引きニート、さっさと働けと称されているほどだ!
「よしっ、まずは情報収取だな」
下手に迷っていても拉致があかない。
俺は足を動かすことに決めた。
「おら、勝負に勝ったんだからさっさとテメェのデッキをよこしやがれ」
おっ、なんか探索開始数秒で人発見!
ラッキー。
なんか裏路地で二人組になって変なことしているけど、情報を得るだけなら誰でもいいや。
「すいませ~ん、ちょっとお尋ねしたいことがあるんですけど?」
俺は眼鏡をかけた小柄な男性を脅す、マッチョゴリラに声をかけた。
「あぁん、誰だテメェ」
すごい形相で睨まれているけど、情報収取なのでスルー。
要点だけを端的に伝える。
「ここってどこだかわかりますか?」
「そうか、テメェ地方の出身だな。いいぜちょうどいい、俺様がここのルールってやつを教えてやるよ」
うわっ、話通じない系か……。
他を当たった方がよさそうだな。
「デッキは持っているんだろ? ならとっとと構え……ろ」
「あの~ここってどこだかわかりますか?」
仕方ないので俺はマッチョゴリラの背後にいる眼鏡男に問いかける。
なんか膝ガクガクしてて恐怖に怯えているみたいだけど、このゴリラよりはきちんと会話のキャッチボールができるだろう。
「ってテメェ! 俺様を無視しているんじゃねぇ!!」
なんかキレたぞこのゴリラ。
「本気でぶっ飛ばしてやる。おらっ、ささっと構えろ!」
左拳を大きく突き出して、なにかをアピール。
「あの、俺別に男の筋肉で興奮する趣味ないんで他所でやってもらっていいですか?」
「誰が筋肉自慢をしている! そうじゃなくて、さっさとクロノギアを構えろったんだよ、このぼんくら!」
「クロノギア?」
見るとごついゴリラの手首に赤色ブレスレットが装着されている。
あれがクロノギアとかいうやつなのか?
「あぁ、テメェまさかブレイドリンクを知らねぇのか?」
「ブレイドリンク……あぁ! それってカードゲームの!?」
「ちっ、知ってんならさっさと準備しやがれ!」
「いや、全然」
「まじでぶっ殺す!」
「だが、それがカードゲームである以上俺が勝負を断る理由はねぇよ。んじゃ早速始めようか」
あれ? でも俺クロノギアとかいうやつを持ってないな。
どうすればいいんだ?
『戦いなさい』
「なんだ、いまの?」
不意に頭に声が響いた。
数秒の間固まってしまう俺だが、気づくと手首にパープルカラーのブレスレットが装着されていた。
おっ、これってあのゴリラが持っているやつと同じじゃないか?
しかも腰にはデッキケースまで!
こいつは至れり尽くせりだな。
「なんだか知らないけど戦う準備が整ってるならバトルしてやるよ! 俺は七星ゆう。世界最強のカードゲーマーだ!!」
「最強だがなんだが知らねぇが地獄を味あわせてやる!」
マッチョゴリラがブレスレットのスイッチを押す。
すると、どういう技術の結晶が詰め込まれているのかブレスレットが変形し、デッキを収納するスペースと一体化したモニター画面が展開する。
なるほど、このボタンだな。
俺もゴリラに習いブレスレットを変形。
デッキホルダーからデッキを抜き、セット!
『対戦相手を認識しました。これより対戦ステージを選択します』
デッキをセットするが否やモニターから機械のアナウンスが流れてきた。
っか、ハイテクすぎるだろこのブレスレット!
近未来感あってテンション上がるんだけど!?
『ステージセレクト完了。アストロアフィールズを展開します』
クロノギアから波動のようなものが放出されると、周囲の景色が一変する。
寂寥な路地裏から森林の芽吹く草原へと風景が変わる。
『ブレイドリンクを開始します』
「「リンクスタート!!」」
掛け声と共にゲームがスタートした。