099.銃之支配を奪い取れ(15)
無重力エリアを突破した私達は、魔法を駆使する魔道機兵を殲滅しながらAI君の居るエリアに辿り着いた。
そこは無重力エリアと安全エリア、そして私達が来たエリアの四方向の合流地点。
ルバー曰く、安全エリアから突破不可能に繋がる部屋の一つとの事。
「あぁ、ここはダメだ。お嬢ちゃんが"イクラ"強かろうと、ここだけはダメだ」
「呼び捨てされた? 私」
「ん? ……っっぁ!? イクラ違いだ馬鹿野郎!」
「知ってる」
「くっ、恥を忍んで言うわ。早く助けなさい!」
私とルバーの会話に割り込んだのはAI君の乙女ボイスだ。
部屋の中央に両腕を縛られた状態で天から吊るされ、ゆっくりゆっくりと晒すかのように回転している。
「あぁ、恐ろしいだろアレ? 拷問そのものだぜ……」
ルバーは顔を伏せ、そんな事を言う。
ああ、確かに拷問の一種であろう。
「んぅ、あふ……何見てるのよ!」
天から吊るされたロープからは、得体のしれない液体がダラダラと伝い落ちている。
その液体がAI君の全身を指先から足先まで全てを駆け抜けている。
「とりあえずSSの準備だな」
「先生っ!!」
「……冗談だよ冗談、そんな睨まないでおくれ」
私はそう言うと、銃を構え照準を合わせる。
パシュン、と一撃で正確にロープを切断してみせた。
「あり、がとう」
ペタン、と着地と同時に座り込むAI君を見ながら、さてどうしたものかと逡巡する。
「ルバー、一応聞いておこう。この部屋は何が危険なんだい?」
「おっ、ようやく真面目に聞いてくれる気になったか!」
頼られたからか、嬉しそうに顔をあげた直後だった。
『菜茶、この部屋には複数の罠が仕掛けられているぞ。一度だけのウィスパー、コンソールの使用不可、こうなると推測の域は出ないが一人では攻略不可能系のトラップが仕込が多々あると予想。いわゆる、二人以上が必須、それも片方は無事でいるという条件が必要な半永久永続罠だなきっと』
「うっ、あっ、そ、そうなんだ。一人じゃ絶対に入れない場所なんだよ、二人でも危険、三人以上ならばギリギリ引き返せる可能性がある、そんなエリアなんだ。そしてこの第四階層に来れる強者はほとんど居ないから、ここで痛い目にあった奴はトラウマを抱えて引退してしまうほどなんだぜ? 何せ、救助が来るまで永遠と拷問を味わうのだから」
説明をしながら、何故か釈然としない雰囲気を出すルバー。
ハウル、お前空気読めよ?
『菜茶に似たのだろう』
何というブーメラン、流石は私専用人工知能だ。
『否、褒めたつもりはないのだが』
「さて、ここには丁度三人いる訳だし、やる事は一つよね?」
「ぇ、ぇぇ。このまま舐められ続けてたまるもんですか」
上から下まで、髪も服もベタベタにしたまま拳を握り締めそう宣言するAI君。
うむ、まだまだやる気があるのは良い事だ。




