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093.銃之支配を奪い取れ(9)

 最初の戦闘から既に五分は経過しているが、未だに第一階層に居る。


「ったく硬過ぎるのも嫌われるっ!」


 石のボディを持つゴーレムもどきの戦闘は何回目だろうか、手慣れた攻略法パターンをなぞる。

 関節めがけて突き出した指は、接触する僅か前でピンアウンとの動きをさせ瞬時にアイテムボックスを選択。


 選択するは戦利品の一つ、マイナスドライバーである。

 ゴーレムの関節部分に深く突き刺した私は加速していた勢いでグルンとドライバーに弧を描かせつつスライディング。


 弧を描いたドライバーはゴーレムの腕を根本から切断して、腕がゴロンとその場に落ちる。


 これだけでゴーレムは光の粒となり消滅していく。

 赤色のエリアだが、この程度なら何ら問題はない。


「ふぅ、やっと次の階層への道か」

「だぁ、はぁ、はぁ、何つぅスタミナしてんだよ。っておーい! 少しは安全な道を、っかぁー!」


 数秒の待機ウェイトで息を整えると、後からやってきたルバーが何か話している。

 年を取るとああも『かぁ、かぁぁぁ↑』と変な奇声を出してしまうのかと、そんな事の方が気になってしょうがない。


 ちなみに近接格闘術しばりプレイは三回目の戦闘から解禁している。

 勿論、それには理由がある。


『是、AIからの個人連絡ウィスパーが気になってしょうがない菜茶なちゃは舐めプを止めたのだろう?』

『うるさい、あんなメッセージ届けば早く行きたくなるじゃないか』


「第四層は危険。舐めない方がいい」


『こんなメッセージが届いたら、すぐにでも挑戦したくなるだろう?』


 せっかくハウルに問いかけてやったのに、だんまりとはつれない奴だ。

 そんな会話をしつつ私の意識は第二階層へと吸い込まれていく。


「ここからはちゃんと注意していけよ? わかってるか? 敵は全部機械になるから、難易度が跳ね上がるんだぞ?」

「むしろルバー、いつの間に追い抜いたんだ」


 どうも階層の移動はNPC達の方が速いらしい。

 処理速度の問題でNPCが先に次の層に現れているこの現象、解せぬ。


「そこかぁ!? どうでもいいから、ほらコレでも使えよ」


 無理やり手を握られたかと思えば、手のひらには拳銃リボルバーが一丁あった。


「使えんだろう? 弾は30発だけ譲ってやるから、大切に使えよ?」


 大切に、か。

 ならば試し打ちだ。


 パシュン、と発泡するとおおよそ期待通りの軌道を通って弾は着弾した。


「なっ、お前さん、友達いねぇだろう?」

「否定しないさ」


 知り合いや友人は居る。

 でも、真の意味でわかりあえる友達ダチってのは今の私には居ない。

 友人とは一体、何なのだろうな。


「そんな小さい事はどうでも良い、先を急ぐよ」

「まさか、また」

「走る!」


 後ろから甲高い奇声が聞こえてくるが、それも何だか慣れてきたような、そんな気がした。

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