087.銃之支配を奪い取れ(3)
さて、メニューをそっ閉じすると私はゴロンと寝転がってみせる。
どう考えてもダンボールデバイスの中で寝転がる事なんて不可能なのに、不可能だからこそ何らかの仕組みでこの世界で行動として再現される。
ハウルデバイスから確認できる現実の私は直立不動なのだから、実に面白い。
「立っているのに、寝転がっている感触。背中に感じる木の質感がヒンヤリとして気持ちいい」
『是、菜茶の体力は信じられない事に回復していっているぞ』
立っているのに休めるとか、この没入感は本格的に危ないだろう。
……私としては危険だろうが、面白ければ構わないのだがね。
「さて、このヘルに関しては十日の猶予が出来た訳か。どこから攻めるかね」
十日有ればヘルダンジョンの奥に居る王様を探すか、観光か。
もしくはあの男の私生活を覗くのもありだな。
『抑止、菜茶にはストーカー気質のきらいがあるので注意だ』
煩いわね。
酒も男も絶ってもうすぐ三十年になるのだから、少しくらい男性に興味をもっても良い年ごろだろう?
『是、正し菜茶、絶っているのでは無く生まれてからというのが正確だ』
『あんた、割るわよ』
『……菜茶は美しい、その気になればより取り見取りだ』
『ふふ、わかってるじゃない』
気分も良いし、こういう時はゲームの世界を観光するに限る。
3Dゲームでよくあるオープンワールドを旅するのも好きだったりするが、VRゲームは未だ数が少ないからこのRLに観光要素があるのは嬉しい誤算だ。
私は来た道を戻ると、城下町へと降り立った。




