086.銃之支配を奪い取れ(2)
しばらくアルボリーが指先をあっちやこっちや移動させ何かを操作してみせると、的が並んでいた砂場側に機械音が鳴り響く。
そんな音に釣られ視線を軽く流すと、的がこちら側へ向かって移動してきていた。
手前に辿り着いた物から順に的が反転すると、その裏側に仕込まれていた銃がむき出しとなった。
的は中央から「の形に折れ曲がると、まるで戦艦の大口径ビーム砲の発射トリガーでも連想させる形状となっていた。
「これが俺達の宇宙船の操縦桿、超密集空砲瞬発空力《ハイパーエアーコンセントレイションエンジン》っんだっ!」
語尾のんだっ、てこの顔で言われてもピンとこないね。
「それで?」
「ん、案外ノリが悪いな? 君はこれを求めていたのだろう?」
「まぁ、うん」
「まぁ良いだろう。この操縦桿は五個あるんだよ」
「見た感じ、五個の銃が並んでいるわね?」
「お、おおう。それでだな、そのトリガーを引くとこの宇宙船の左右の旋回、前進、そして空主砲停止が出来るんだよ! あぁ、ロマンだね!」
こいつ、銃の事を語る時顔がヤバいね。
まぁ、先ほどまでの説明よりまだマシといえる内容なのが救いだ。
「へぇ、それなら誰でも操縦できそうじゃない?」
「それがそうとも言わねぇ。手前のキーボードで密集した空砲銃の発射数を制御しなきゃいけないし、前進用の二つの銃は同時に引かないといけないんだ。それもほら」
アルボリーが銃を手に取ると、途端目の前に宇宙空間が広がり少しばかし驚いた。
「ここがモニターになるんだがね、発射数や空砲を放つ角度をしっかり調整しないと不発するわ、思わぬ場所へ進路が進むわ……挙句の果てにメインにある空主砲停止は再点火に時間がかかるが故に、ミスったら目も当てられない事になる」
「例えば?」
「他の宇宙船と衝突して全滅とか、加速が止まらなくて延々と宇宙船が回転して三半規管を殺しにかかられたり、他にも色々だな」
ふぅん。
「王様はそんなコントロールをやすやすと行っちゃうわけだ?」
「そうだな。まぁ何せ銃之奇跡保持者だからな……」
やはりヘルダンジョン攻略が一番面白そうであるな。
攻略すれば奇跡の力を手に入れれるのだというのだから、いくつか持っていても良いだろう?
だが……。
「言いたい事は分かったわ、それじゃ操縦がちゃんとできれば私が正面に来るだろう隕石を蹴散らしても構わないのだろう?」
「……ははっ、無理だ無理、まだ一方的に踏み込んできたお前に命を預けれる程愚かじゃないよ」
「ふふ、ならばやはりやるしかあるまい?」
心の中で決闘と叫んでおこう。
「私が貴様に勝てばTOP3で、それなら誰もが認めるだろう?」
「……いや、私もプライドがあってあんな発言をしたがお前さんとは正直撃ち合いたくない。殺されるイメージしか無いからな」
物騒な事を言うやつだ。
何度かヤレルタイミングを伺っていたが、それだけでその言いようは無いだろう?
「どちらにせよ、王が帰還しない限り隕石との正面衝突は避けられないしここは偶然か必然か、運の女神様にかけるしかないか」
「ん、女神様だなんて。良いだろう、悪いようにはしないよ」
邪心や魔王や、そんな不名誉な称号は数多く受けたことがあったが、女神様と言われたのは初めてである。ふふ、悪くない。
「そ、そうか。急に笑顔になりやがって、気味が悪い」
「ん? 君が悪いって何だね? まさか私に惚れたとか言わないだろうな」
「な、何でもない! とにかく、この王の間まで自由に行動できるよう許可書を発行するから、後は自由にしてくれ!」
逃げるように退出するアルボリー。
すると、コンソールに何かが追加されたと振動連絡が入った。
ピンアウトしてメニューを調べると、第壱萬七千号艦大陸のメニューが追加されていた。




