085.銃之支配を奪い取れ(1)
しかし間近で見るアルボリーの整った顔に、好印象の綺麗な黒髪。
青漆の瞳は、グリーンガムでも突っ込んでいるのかな? と突っ込んでみたくなる。
他の衛兵達とは違い、服装も小綺麗だ。
「んー聞きたいことは色々あるが、とりあえず宇宙船ってところから聞こうかね?」
「そこからかよ……自分の住んでいる場所が、どんな形がしているか知っているか?」
馬鹿にしている、訳ではなさそうだな。
「勿論、知っているとも」
「ほぅ? じゃあ言ってみろよ」
「ふふ、貴様こそ実は知らないのではないか?」
案外挑発に乗りやすいようで、ぴくぴくっとこめかみが痙攣したのを見逃さない。
「すまない、それじゃ同時に言おうじゃないか」
「ああ、いいとも!」
良いんだ。と思いつつも、呼吸を合わせて答え合わせを行う。
「地球だ」
「宇宙船だ」
「「……んぅ」」
思わず二人して唸り声を上げる。
「私から先に伝えておこう。私は地球という星からやってきている、宇宙船に住む時代はまだ訪れていないよ」
「星に住むとか、いつの時代の人類だよオイ」
これは何かな。私達より先の時代設定というわけか。
「それで、君たちの事を教えてほしい。後ついでで構わんから、この船の操縦もみせてもらえるかな?」
「……本当ならば許可出来ないが、君が本気になれば我らが束になっても抑えれないのだろう。わかった、説明するから暴れてくれるなよ?」
まるで猛獣でも見るかのような視線だが、偉そうなクセに融通が利くのは素晴らしいね。
『困惑、実際TOP3と言ってました』
『ハウル、偉いというのは真のTOPだけが該当するのだよ』
『再困惑、傲慢過ぎます菜茶』
デバイスの癖に頭が固い奴だ。
「勿論、暴れたりしないわよ? 少なくともここではね」
説明を始めたアルボリーは、どうやら口下手だったらしく話す内容がほとんど頭に入ってこない。
『まとめ、部分情報。
この宇宙船は危険度一萬クラス。
司るダンジョンは銃之迷宮。
他、小さなダンジョン多数。
強く願い事をすると、叶う世界。
願いを叶えた者は祈願者となる。』
『まとめ、現状。
銃之迷宮の祈願者は、既にこの国の王が支配済。
この宇宙船、銃之支配の操縦は王のみが可能状態。
十日後、隕石と衝突してこの宇宙船は大破する予定。
銃之迷宮は五階層のダンジョンで、現在三階層が突破出来ない状態。
王が居るのは最下層の五階層との事。』
『ハウル、よく今の説明だけでそこまでまとめたわね。褒めてあげる』
『御意、ありがたき幸せ』
ちょっとずつキャラがぶれるわね。
でも、今回はハウルに感謝しておこう。
「ありがとう、よくわかったわ」
「お、おぉ……」
説明した本人が驚いてどうする。
「それで、制御装置を見てもらいたいのだけども」
「ああ、さっきも説明した通り見るだけ無駄だとは思うが、仕方ない」
『まとめ、宇宙船の制御について。
巨大な大陸が宇宙船となり、その地下部分はダンジョンとなっている。
制御方法は二通り。
宇宙船のエンジンはダンジョンの力を利用したものが多い。
しかし、一部の宇宙船は祈願者の力を利用した特殊な移動方法を用いている。
それにこの第壱萬七千号艦大陸が該当するとの事。
尚、その祈願者の力は現在王が独占状態である』
『あー、そこは理解してたわ。ごめんね』
『残念、無念』
「良いさ、興味本位なのだから。それに、もしもだが」
「ん?」
「私が制御出来るならば、してしまって構わないのだろう?」
「はぁ?」
つくづく喋りが下手な奴だ。
でもまぁ、その綺麗な顔が馬鹿っぽくなるのは嫌いじゃないね。
「ほら、はよ、はよ」
「わっ、銃口を向けるな! 少し待ってろって!」
残弾ゼロなのに、慌ただしい奴だ。
さて、王城攻略に続いて宇宙移住艦大陸の支配といきますか。




