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084.王城攻略(7)

 移動中に特に会話も無く、次々と廊下を進んでは階段で上の階層へ登っていくという時間が続いた。


 そして五階層へとたどり着くと、それまでとは違い広いエリアが広がっていた。

 更に、前には三つの大扉があることから王の間はこのいずれかだろうと予想する。


「本当は部外者は連れて来たくは無いのだが」

「アルボリー様、そう言わずに。残念ながらあの娘っ子は下手すると王と同列です。無茶は良くない」

「だぁ、部下ルバーに心配されるとは。いや、お前の評価だからこそか」


 中央扉の前でコソコソ話をする二人だが、全部ログとして表示されているのでコソコソ話をするならウィスパーを使うべきだったな、と心中で呟く。


『同意、菜茶なちゃは堂々といつも話をするのを見習うべきだと私も思うぞ』


 また心の中で考えてたことが現実リアルで独り言となって漏れ出ていたようだ。

 だがハルク、私のは独り言であってコソコソ話ではないからな?


『御意、菜茶の独り言は全部私が拾おう』


 そりゃどうも。


「お待たせしたな、ここが君たちの願う場所だよ」


 アルボリーはそう言うと、鍵をガチャリと鍵穴に入れ閉ざされた王の前へ続く扉を解き放った。

 中に入ると、更に広いエリアが広がっていた。


「これは、まるで弓道場だな」

「ふぁ……何もないね」


 私たちはそれぞれ感想を述べていた。

 弓道場といって相違ない。木の板で覆われたエリアが足元に続き、その更に奥側には砂場がある。

 目測だが、5m~100m近くまでの的が左右から中央に向かって奥へ奥へと並んでいる。

 ただそれだけの空間。


「ここは?」

「ここがこの宇宙移住艦大陸スペースコロニー第壱萬七千号艦大陸だいいちまんななせんごうかんたいりく、通称銃之支配(ウバウモノ)の中枢で間違いない」


 スペースコロニー? 艦大陸? ふむ、わからん。


「とりあえず座っててくれ、客人だから茶でも用意してもてなそう」

「スグ用意します、だから無茶だけはしないでくださいよアルボリー様」


 使い慣れた場所のように、この何もない空間でお茶の用意を始める為行動を開始するルバー。

 これで私達三人だけとなったわけだが。


「改めて、私はアルボリー・スウェード。ここのトップスリーとだけ言っておこう」

「私はイクラ」

「わたしはAIよ」


 椅子も何もない為、地面に直接座っている訳だがAI君、それはどうかと思う。

 アルボリーとAIは胡坐あぐらをかいているわけだが、AI君に至ってはフレアスカートの特性上完全に下着がこんにちはをしてしまっている。

 私は勿論、正座だよ正座。

 ほら、アルボリーもAI君に視線が……いや、面白くないな。


「アルボリー、ここが中枢だと言ったが王は一体何をする場所なんだね? 見たところ射撃の練習くらいしか出来そうにないが」

「本当に君たちは部外者のようだね? ここでこの大陸の移動先を制御コントロールしているんだよ。でも肝心の王はダンジョンに御執心、早く連れ戻して移動先を変更しないと不味い状況なんだ」

「ふむ、中々に話が飛びすぎて理解に苦しむが続けてくれたまえ」

「田舎からやってきたのか? この宇宙空間の事は知っているよな?」

「初耳だが」

「……まさかの無知な者達だったとは。この大陸に来たのは偶然か? 遭難か?」

「偶然と必然だな。私が通ったゲートがここにつながっていた、それだけだ」

「ゲート系の祈願者が再び現れたのか。慌てたところでどうしようもないが」


 もう少しわかりやすく説明出来ないのか?


「とりあえず簡単な事情はわかった。ゲートの宇宙船より来た君たちは自分たちのルールで行動していただけ、という事だね? いや、ゲート系ならばもしかして……」


 勝手に話、勝手に話が進んでいく? いや、ゲート系や宇宙船や。これはあれか? RLデバイスがゲートで、宇宙船は地球の事を指しているのか。


「後十日で、進行方向にある巨大な隕石と衝突するコースなんだが、ゲートで何とか回避させてくれないか? 礼は特に出せないが、この大陸での自由を私が認めよう。いや、無駄な殺生は控えてほしいがね」

「どうするAI君?」

「んー、私そういうのあんまり興味ないなぁ。折角気合入れて演技むてきせんげんまでしたのに、完全に不完全燃焼だよ」


 そうだね。

 下へ潜るダンジョンと、上へ登る攻略ではそれぞれ役割ロールが違うみたいだ。

 上へ登るこの攻略は、運営が示唆していた支配に関係する気がする。

 更なる未知、これはつまりこの大陸という名の宇宙船を操縦して宇宙を飛び回れと。

 そして次のヘルダンジョンを自力で探して行けという……ふむ、ゲームの規模が大きくなりすぎて私には何からしたら良いのかさっぱりだ。


「それじゃあ、私は少しここでお茶を濁していくよ」

「うん、私はダンジョン攻略に戻るね。あっ、小腹空いたから一度ログアウトします」


 私の返事も聞かず、ログアウトしたAI君は崩れるように眠りこけた。


「お茶の用意が出来たぞー、って今度は知らない方が眠ってやがる!?」

「悪いルバー、この娘はAI君というのだが、私と出会ったあのダンジョンまで連れて行ってくれないか?」

「何で俺が!?」

「この幼女ボディを背負えるチャンスだと思わないかね?」

「……くっ、脅されたからしょうがなくだぞ! ったく、お前たちは状況無視で良く眠る奴だぜ全くもぅ」


 ルバーとAIが部屋から立ち去り、私とアルボリーの二人となる。

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