078.城内攻略(1)
部屋の中の物色が一通り終わった頃、フレンドリストが点灯した。
『AIです先生、何処へ行けばいいんですか?』
『ほぅ、個人通話はこう聞こえるのか。とりあえずヘルダンジョンの方入ればこっちに来れるんじゃないかな。PT飛ばしとくよ』
『……受け取りました、それでは向かいます』
待つこと数秒。
正面に光の粒子が漂い出し、それらの量が一気に増加した瞬間人間の型へと圧縮され弾けた。
「な?」
「ここはダンジョン? いえ、それよりも突っ込みどころが多すぎてどこからか悩んでしまいます」
真剣に悩む表情をみせたAI君は僅か一秒にも満たない時間で突っ込みの順番を決めたようだった。
「まず先生、その格好は無いと思います。プロゲーマは見た目も重要なんですよ!?」
「そこかいっ! いや、確かに今の服装は私自身どうかと思っていたところだがな」
部屋の中にある服には様々なオプションがついていた。
だが、銃之世界で防御力なんてほとんど信用出来なかった私はいかに動きやすいかを重視して選んだ服を着ていた。
「プルオーバー(クリーム色と灰色のボーダー柄):ゆったり着れる私服。
ダボダボ感に、肩から覗く魅せブラで男性の視線は独り占め間違いなし。
防御力ー1
オプション:魅了(小)
※オプションは20歳未満の女性に限る」
「ショートパンツ(ピンク):魅せパンの用意は良いかい?
軽くて解放感溢れるショートパンツで自慢の足を魅せていこう。
防御力ー4
オプション:魅了(小)
※オプションは20歳未満の女性に限る」
ふっ、実に解放感溢れる装備である。
「ちょっと先生! これ防御ダウンしか効果無いじゃないですか!」
わざわざ私の服を手で掴み装備情報を探ってくるAI君、流石仲間のステータスもしっかり把握しようとする姿勢、嫌いじゃない。
「それにオプション、全部範囲外じゃないですか!」
「こらこら、動きやすければ問題無いと言っただろう? 私は気にしていないさ」
「はぁ、先生がそう言うなら私は構いませんが……」
「AI君、先生じゃなくて私の事はイクラと呼ぶように、な?」
「了解」
良いノリである。
子供声で応えるAI君は、まだ初期アバターのままである。
見た目は現実の自分と似せて作ったというキャラクターは、目が細く左右が吊り上がっている。
つまるところ人相は悪めで、小さい口に八重歯というロリっ子だった。
まぁ、現実のプロゲーマ内では有名人物の一人であるAI君は、背丈が低く小学生と勘違いされる事もある程だし、見た目は強気なのに柔らかめな正確に、ノリの良さが相まってとてつもなく男性陣に支持されている。
私の支持者たちはガチ勢しかいないため、ほんの少しだけ羨ましくおも・・・ったりしないからね!
「さてAI君、君が来るまでに送った情報には目を通してくれたかな?」
「はい。とりあえずこの銃之迷宮と、ここ城内とを攻略を目指す事。ダンジョン特性は銃、こうしてボイスチャットが出来たり……この没入感、痛みもあるんですよね?」
「ああ。ぶっちゃけ体力なんか気にする暇がないよ、だから防御力なんて飾りさ」
「……それでも私は身を固めさせていただきます」
防弾チョッキに、フレアスカート。
「いや、そういう割にハイヒールはどうかと思うが?」
「せめてものオシャレですよ!」
見た目はまぁ可愛いと思うが、流石の私でもハイヒールでダンジョン攻略は難しいだろう。
が、アレでもプロゲーマだ。
問題無いと判断するなら、私がとやかく言う資格は無い。
「わかった。武器は私もまだこの銃のみで、弾も二発しか無いから調達しながらいくよ」
「確認ですが、この王城乗っ取るんですか?」
「勿論。ここの王様が攻略者か攻略者なのか、見極めておきたいからね」
「NPCの済む場所から攻略とか、本当に可能なんですかね?」
「何、物は試しさ」
「了解」
私は扉に近づくと、バンッと足蹴りにして扉を開放した。
『ゲームの始まりだ!』
ってハウル、貴様私の台詞を……まぁいい。
「「ゲームの始まりだ!!」」
私とAIはそう言うと、拳を構えまだマッピングされていない城内攻略を開始した。




