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075.銃之迷宮(2)

「ガラクタ:ゴミだけど、いつかは日の目を見るだろう」

「銃:基本武器。

   弾丸を6発まで装填出来る。

   攻撃力+10

OP:ヘッドショット時、即死効果

   クリティカル時、防御力を無視」


 なるほどと、ドロップ品からこの世界の銃の性質を読み取る。

 形状はリボルバー式、他にも様々な銃が出てくるのかと思うと心もとない武器ではあるが、無いよりはマシというもの。

 そして攻撃力があるということは、初期の防御力の10に阻まれ最低保証の1ダメージを受けていたという事になるが、痛みからして1ミリとも被弾したいとは思えない仕様だった。


「残弾は2発とか、ドロップ品というよりは戦利品というべきか」


 それはさておき、左右に道は続いているがどうしたものか。

 まるでゲームやアニメなどでみる宇宙船の通路のような場所の真っただ中、僅かに人の気配の感じる左側へ進む事にする。


 扉で区切られていた場所へ近づくと、私を認知してか壁の一部が緑色のライトを点灯させウィン、と機械音を鳴らして扉はスライドした。


「ん」


 思わず声が漏れるが、スグに息をひそめる。

 目の前にはスゥ、スゥと壁を背に眠りこけている男性が居た。

 アフロヘアーの黒褐色の肌をしたその人物は剥き出しの防弾チョッキをライフジャケットのようにシャツの上から着込み、腕にはプロテクター、膝にもプロテクター、防御防御している割に顔は剥きだしというおそまつな装備で寝ていた。

 腰からぶら下げたホルスターは地面にぐちゃりと接触しており、あれではいざという時にスグに抜くことはできないだろう。


 まぁ、話しかけても問題はないか。


 これが私の結論だった。


「おいっ、起きろ」


 ゆさゆさ。


「…………」


「おいっ、起きろ」


 ゆさゆさゆさ。


「おいっ、起きろ貴様! いつまで私の時間を取らせるつもりだ!?」


 声を強めると、男はビクンッと肩を震わせると同時にダンッ、と飛び上がるように立ち上がり敬礼をしていた。


「ハッ! おかえりなさいませ、アルボリー様! こちら、異常なしでございます!」


 視線が完全に斜め上にあがっているため、どうやら私を別人と勘違いしているようだ。

 めんどくさいので、容赦なくかかとで足を踏み抜いてやることにした。


「イダァァ! ちょ、ひどいで……すよぉ? んぅ?」

「おはよう、少しお話良いかしら」


 やっと私を視認したというタイミングで残り2発しか弾の入っていないリボルバーを顎にあてがう。


「貴方の事、教えてくれる? 言えないなら次を当たるから3秒以内に応えて。3・2」

「ッチィィ」


 私のカウントダウン中に銃口をザラリと肌を滑らせ逸らせると同時に今度は私の腹部に銃口があてがわれていた。


「お前こそ何者だ、まさか反政府組織クーデターの生き残りとか言わねぇよな?」


 真剣な表情に声色、聞いたこと無い声からして新人声優を起用してのNPCか? それともプレイヤーか? いや、プレイヤーにしては反政府組織クーデターなんか単語を使うとは思えない訳で。


 つまり、ここは会話を続けるのが一興というものだ。


「ふふ、良い動きするじゃない。でも、質問を先に応えるのは貴方が先よ?」

「ふんっ、女だからって手加減すると思ったかこのアマがぁ!」


 カッ。


「引き金を引いたわね? まぁ、茶番はこの辺りにしましょうよ」

「あ、あれ、なんでだ」

「まだ気づかないの?」


 撃鉄ハンマーが下りきらず弾が射出されていない事に、やっと気が付いたようで目を丸くして苦笑いをして見せる男。


「まいった、なっ? だから銃をおろしてくれねぇか?」

「めんどくさいのは嫌なのでね、下ろした瞬間体術戦闘とか抜きにして、会話をしよう」


 男も私の忠告を真面目に受け取ってくれたのか、それ以上の追撃をしてくることは無かった。


「で、貴方は何者なの」


 距離をとると、私も壁際に背を預けて尋問を開始した。


「ちぃ、俺の銃にゴミなんか詰めやがって……だぁ、そんな目で見んなよ! 俺はルッティア・バーボン、王様探しの荷物番だよ」

「覚えにくそうな名前ね」

「ルバーって愛称で呼んでくれて構わんよ。で、お宅は?」

「私は……イクラよ、このダンジョンを攻略しにきたの」


 怪訝な顔をしてルバーは顎を持ち悩み込む。


「ダンジョン攻略、だと? お宅、もしかしてよそ者か?」

「まぁ今日が初めての没入だから、そう捉えてもらって構わない」

「どうりで知らない顔だと思った。いや、わりぃな、てっきり反政府組織の生き残りが襲ってきたのかと思っちまったよ」


 ここにきてやっと緊張を解いてみせるルバーに、私は問いを重ねていく。


「何故警戒を解く? それに王様探しとは一体?」

「あー、よそ者なら知らなくてしょうがないよなぁ。まぁ時間はたっぷりあるし座ろうや」


 急に気さくな感じになったルバーは腰を下ろすと、聞いても居ない事も込みでぺらぺらと喋り出す。


「ここは銃之迷宮、封印指定の迷宮なんだがうちの王子様が攻略をしてな? 既に銃という概念は全て王子のものになっているんだわ。もしも銃の奇跡を手に入れようと思って乗り込んできたのならご愁傷様、既に主が決まっているから攻略しても無駄だよ」


 ふむ? この王子様とやらがヘルダンジョン最初の攻略者プレイヤーという事だろうか。

 ならば、是非ともどんな人物か挨拶せねばならないな。


「ちなみに反政府組織はそんな王子の命を狙う者達の事さ。個が奇跡を持つことを反対する奴らが居てな? 俺達の王はそんなんじゃないって言うのによぅ、思想が違えば相容れないずな……な? よそ者には何のメリットも無い話だったろう?」


 その王とやらに是非合わなければならないな。


「そうね。じゃあ王子様の場所まで案内してくれるかしら?」

「おいおいおい、今の話聞いてただろう? それに王は最下層に潜って出てきてくれねぇんだ。だから俺達捜索隊が出動してるってのにさ」

「ふむ……最下層にはスグに行けるのかね?」

「まさか! アルボリー様が今必死で3階層を突破しようと探索中ですよ」


 どうやら、シナリオとしてはその王子を探し出すのがクエストクリアという扱いになるのだろう。

 いや、王子プレイヤーだとすればダンジョン権利の奪い合い要素があるということだろうか?


「ちなみに封印指定だとか、奇跡だとか単語が混じっていたけど、あれは一体何なのかしら?」

「うぇ、あんた一体どこから来たんだよ? この宇宙域ばしょ第十級封印ヘル指定された船が集まっているってのに、まさか知らずに迷い込んだとか言わねぇよなぁ?」

「んー、全く話が見えてこないのだけど」


 かみ合わない。運営よ、プレイヤーを放置するような設定をするのは三流のすることだぞ?

 ……だが、それが良い。


「でも、何だか楽しくなりそうな事だけはわかったわ」

「……楽しそうで何より。で、お宅はどうするんだ?」

「そうね、一度ログアウトして色々用意しようと思うわ」


 ピンアウトすると、メニューを開きログアウトをすると視界は闇に閉ざされた。


 僅か数分の没入だったが、私が挑むヘルダンジョンは銃之迷宮というらしい。

 掲示板には既に多数のヘルダンジョン報告があがってきている。


 一度没入したヘルダンジョンはクリアするまで変更が出来ないのやら、NPCが町に連れて行ってくれるやら。遭遇率は極めて低いやら。

 そして、痛覚やら味覚やら五感が再現されるVRスゲェという書き込みがあったが、決してあれらがデマじゃなかった事がわかった今。


「今のままじゃ二階層でも苦戦しそうだし、徹底的にやるしかないわね」


 私は電話を取ると、知り合いの技術野郎に依頼をする。


「三時間で用意しな」


 既に思想を固めた図面は渡しているので、急かすだけで問題は無い。

 アレが届くまで、私はシャワーを浴び二階にあるベッドルームで仮眠に入った。

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