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073.世界最強之挑戦(9)

 視野が回復すると同時に、私がRLの世界ヘルへ降り立った事を理解する。

 今まで数回プレイをしているが、今回の地形は独特だなと思考する。


 まずは味見なので初期状態バニラで潜っているが、これはなかなか骨が折れそうだ。


「コンテナが転がっていて、更に地面は鉄板か? いや、ここまでの硬度があれば底が抜けたり貫くことは出来ないか」


 完全にSF世界のワンシーンを思わせる青白い空間に、こんな空間も存在していたのかと驚きを隠せない。地形データもそこそこ観察していたが、そのどれもが洞窟を進む形式やや地下へ潜る形式が多数を占めていた。たまにだだっ広いフィールドもあるようだが、それでも文明的なフィールドは無かったと記憶している。


 いや、PvPフィールドは近未来系のフィールドだったと記憶している。

 ならば、こういうダンジョンがあっても変ではなかったのか。


「待てよ、そもそもNPCの出来にもよるが……」


 更に考察は深まる。

 人が住めるような世界観がアンロックされたと考えれば、こういう天井があり蛍光灯であろう光源があり、更には壁などの素材やコンテナがあっても変では無いのだろう。


 コンコン、とコンテナを叩いてみるが中身を確認する術はなさそうだ。


「まっ、進みますか」


 生憎、背後は一本道の行き止まりのようでコンテナを避けて前に進むしか道は無かった。

 わざわざ上を登らずとも、十分に人が通れる横の隙間から進めるのでそっと顔を出そうとする。


 刹那


 全身に電撃が走るような程の震えが襲い掛かる。

 全力警戒りだつが必須と理解する前に体はコンテナの裏へ隠れるようにビタッ、と両手で押さえつけこれ以上体が奥へ進まないようにする。


 プシュッ。


 頬に一閃。

 途端、顔が熱くなり次第に軽い痛みが襲ってくる。


「ふふ、馬鹿げているな」


 肌が一瞬コンテナの外へ露出した瞬間、私の頬は撃たれていた。

 たったこれだけの事で、私はここのダンジョンの性質の一つを理解する。


「RLは剣や魔法が主流だと勝手に思い込んでいた私の落ち度だろうね」


 常人ならば、そもそも前に進もうとした瞬間理解する間もなくDEADEND(しぼう)していただろうが。しかし、つい癖で慎重に進もうとしたのが良かった。


 いくら危険を察知しても、勢いづいた体を止めるのは至難の業だからだ。

 今回ならばゆっくり覗き込もうとした動作にプラスして壁際コンテナに手を当てるという行為が出来たからよかったものの。


「クイックショット持ちのスナイパーか、いや私の音には反応しないし露出した瞬間に正確に打ち込んでくるあたりアレか」


 設置型無人機関銃セントリーガン

 それと無音機能サイレンサーが付いているのだろう、射出音は極わずかな空気振動音しか聞こえる事が出来なかった。

 音の出どころと、単発だったことから攻略の糸口はいくつも掴めたものの、一つだけ困ったことがあった。


「初期アイテムが何も無いのではなぁ」


 ナイフの一本でもあればいいのに、と珍しく愚痴る。

 この道を抜けるのに対峙する設置型無人機関銃セントリーガンは一機だと想定される。

 また、無音機能サイレンサーがあるため連射式ではないという想定。

 正確なショットゆえに、二方向同時での高速無力化アジリティデタッチで何とでもなる。


 それゆえに。


「AI君と進むのが正攻法なんだろうが」


 ふむ、と逡巡する。

 私に喧嘩を売った運営を前に、最初の一歩すら進ませてもらえないとか癪に障る。

 ならばやるしかなかろう?


 ストレッチをすると、私は呼吸を整える。

 息を軽く吸い込むと、フッと呼吸を止める。

 瞬間、全身の筋肉のテンションがマックスまで引き絞られる。


『止めれないよ、私は』

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