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071.世界最強之挑戦(7)

 デザートやフルーツの皿が乗ったお盆に変わった頃、私たちは会話を始めた。


「さて、綾君、桃君。私達の事について話し合おうじゃないか」

「うぇーい、やっと本題ねっ! まっっっってましった、総大将」

「はい」


 シャンパンで酔えるとは幸せそうで何よりだ。

 まぁ、飲んだことが無いのでどんな具合なのかさっぱりわからないのだが。


「まずは桃君、君からわかる範囲で全てを話したまえ」

「えっと、えと……」

「話し方や流れは気にしない。あの部屋の事、昨日から今に至るまで全てを吐け!」

「ひっ」

「ダメじゃなぁぁあい、ももちゃーん、何かあったらお姉さんが助けてあげるから全部いっちゃおー」

「……わかりました」


 桃は語る。


 前日、母親の命令めいれいにて出かけた事。

 命令の内容や全貌は全く覚えておらず、何故あの部屋で私が寝ていたのかわからないとの事だった。


「本当に私、なんであそこに居たんでしょうか? それに、お二人の事を何故知っているのでしょうか」


 ここまでくると、個人個人の記憶障害という線は消せるであろう。

 何せ、誰一人としてあの部屋について記憶が無いのだから。


 綾は語る。


「私、なんでかあの部屋の鍵持ってたのよねぇ。後、私のじゃないタオルも部屋にあったし? 気が付いたらあの部屋に足を運ぼうとしてたし。これはミステリーね」


 綾も私達同様、記憶を持ち合わせていなかった。


 共通する事と言えば、自然と足が向かうようなそんな場所。

 親の命令だからといって、寝泊まりするようなそんな場所。

 つまるところ私達はあの場所で知り合い、一時の休息を得ていたのではないだろうか。


「……少しだけ馬鹿みたいな話をするけど、笑わずに聞いてほしい事がある」


 パクリとプリンを頬張りながら告げる。


「私はあのRLをプレイしていたであろう人物が何らかの事件に巻き込まれた、そう考えるのだよ」

「ゲームで事件ですかぁ?」

「事件?」


 いつの間にかワインを注文して飲みだした綾と真剣に私の話を聞く桃は聞き返していた。


「事件ってぇ、ゲームで遊んだくらいじゃ何もないでしょぉ~?」

「あのゲーム、お姉ちゃんも持ってます。あの、危険なんですか?」


 私は逡巡しゅんじゅんする。


「いや、私もおかしなことを言っている自覚は十分にあるんだ。でも、あのRLのフリーズした画面に部屋主の不在、更に私たちの記憶からスッポリと抜け落ちた何か。いや、言い直そう」


 瞬断した結果を伝える。


「あのゲーム自体が犯人と言っても良いと思う。根拠は何もない事が根拠だ。こんなふざけた状況を作れるのは、そう例えば人類の及ばないテクノロジーにあてられたと考えればどうだろうか? そしてそんな技術力があるとすれば、主流でないVRゲーム会に旋風を巻き起こしたRLの技術力を疑っても良いと思うのだよ」


 スプーンを握ったまま力説する私にジト目で応えるのは綾である。


「菜茶さん、ふざけるのは名前だけにしてくださいよぉー」

「よくわからないけど、よくわかんないけど!」


 一拍おいて、私は宣言する。


「まぁそんな予想をした私だからこそ、RLというゲームをサクッと終わらせて一つの可能性をつぶしてみようと思うのだわ。だからあんたたちも情報集めしときなさい、このままだと気持ち悪いでしょう?」

「ぅー、うん。確かに、時間も腐るほどあるしね……」

「わかりました、お母さんと話してみます」


 話し中も手を止めることなくデザートタイムをしていた二人に私は告げる。


「ほら、なら二人とも携帯出しなさい」

「あーいいじゃん。私、プライベートの友達っていなかったのよねー」

「あの、私も良いんですか?」

「ほら、桃も早く出しなさいって。私たちは友達、いいえ、仲間なんだから」


 全く。

 孤独だったハズの私が友や仲間などという単語をリアルではくなんて、一体どうしたのだろうか。

 でもまぁ、悪くは無い。


 記念写メを取り、タクシーで桃を自宅まで送ると私たちはそれぞれ動き出す。

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