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066.世界最強之挑戦(2)

 新幹線の中は早朝にも関わらずスーツ姿の男性が多く座っている。

 空席をみつけるも、中途半端に三席シートの中央だけが空いているという素晴らしい立地である。

 このポジションならば左右からの突然の攻撃にも他人を盾に立ち回る事が出来るじゃないか。


「ふん、馬鹿な妄想はよそう」


 駅弁なごゃまんさぃ1,050円とお茶パックの入った袋を眠りに落ちている男性にぶつけないようにしながら、何とか中央座席まで移動をするとドカッと腰を下ろした。


 空腹を覚えながらも、先に携帯を開くと最近手を出した新作VRMMOの情報サイトへアクセスする。

 理不尽な難易度設定に、通常のダンジョンですら四階層で詰むというのが世界の全プレイヤー共通の認識のこのゲームは、その先に何があるのか、どこまで潜れるのかとありとあらゆる手で攻略が進められている。

 そんな理不尽難易度に対して、更に上位のモード【ヘルダンジョン】の実装がされたのは記憶に新しい。

 こちらに対しては、運営が十階層が最深部と公言していてクリアしてください、とかお願い口調で呷ってくる始末だ。

 躍起になってヘルダンジョンに挑んだプレイヤーは数多く、しかし攻略は通常ダンジョン以上に芳しくない。

 私は時間が取れずほとんど挑戦出来ていないが、そのうち攻略を開始するつもりである。

 相方のAI(アイ)も自身の体を動かすVRジャンルにも関わらずプロゲーマらしく良い動きをしてみせていたので、攻略も時間の問題だと考えている。


「んなっ」


 情報をサイトを覗くと、大きな赤文字で想定外の文言を目にしてしまう。


「ヘルダンジョンクリア者1名だと!? いや、それよりも何だこれは」


 思わず声を荒げると、隣で寝ていた男性がビクンと飛び起きたが、構わず私はサイトを覗く。


 二階層構造のヘルダンジョンクリア者が誕生致しました。

 これより運営はヘルダンジョン、またRLの世界についての情報開示を開始致します。


『ダンジョンの構想:巨大かつ、数多に渡るダンジョンはそれぞれの大陸地下に存在しています。

          攻略者にはそのダンジョンの特性を身に着ける事が出来ます。

          ヘルダンジョンの難易度により優しいものは最高難易度ヘルの2階層から、突破不能ヘル最高難易度ヘル10階層、まで存在します。

           ※ヘルダンジョンに没入時は、自動的に突破不能ヘルが選択されます。

       大陸:町やNPC等、現実と変わらぬ世界で生活、冒険を繰り広げる事が可能です。

          大陸表層や、NPCとの遭遇はあなたの運、行動力次第です。

       支配:プレイヤーは大陸を支配する事により、更なる未知なる世界を冒険する事が出来ます。

     機能解放:アンロックしていた機能の解放に伴い、没入感は今まで以上のものとなりました。

 ぜひ、未知への道を歩んでください。』


 うん、わかるようでわからん。

 ただ間違いなくわかる事は一つ、誰かがあの理不尽を突破したという事だ。


 私以外にアレをクリアできる奴が居るとすれば、チーターか? いや、チートしたところであれはどうしようもできない。

 ならば、時間がとれてなかったとはいえクリアできていない私よりも先に突破する実力者がどこかに居た? いいや、そんなはずはない。

 何故なら私以上のプレイヤーなど見たことも聞いたことも無いのだ。

 私がプロゲーマの一位だとすれば、二位との力量差は目に見てわかる。つまるところ、私の領域には誰も居ないのだ。


 ああ、先ほどの放送では私に追いつくだろうやら、プロゲーマじゃないだけで何処かに私並みのプレイヤーがいるだろうとか言ったのは私だ。私が言ったが、あれは営業トークでしかない。


 ハッキリ言おう。


「私の領域に踏み込めた人類は未だ居ないのだよ」


 口に割りばしをくわえると、パキンッと割って見せる。

 その瞬間、一つのピースが繋がってしまう。


「ん、この時間は……」


 放送中、上の空になった時間帯。

 ミウラ程ではないが、どんな状況下だろうがタイムテーブルは把握出来る。

 そして私がそんな状態になった時間帯と、このクリア者のクリア時間が一致しているのは偶然だろうか?

 私の第六感がクリア者を感じ取り、放心したとでもいうのだろうか。

 いや、流石に考えすぎである。


「まぁ、一つ一つ潰していくか」


 そう呟くと、お弁当の中身を一品ずつ確実にもぐもぐしていった私であった。

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