058.ラブリィイイィートダンジョン攻略(4)
自身、少し前に人型の敵を吹き飛ばしていた事を棚に上げてそんな思考にふけっていたら、ダダダッとものすごい勢いで視界に入る位置まであの男は駆けてきた。
「ゴルァ! 人間離れした力で人様ァ殴るたぁ、馬鹿かテメェは!」
遠くから指さしながら罵倒しているが、どうやらこの分だと心配する必要はなさそうだ。
「ララ、アイツは一体何なんだ?」
「アレは国の兵士の一人よ。時のダンジョンのドロップ品で時を自由に扱えると思い込んでる馬鹿達はね、こうやってダンジョンの挑戦者を襲って食い物にしているの。どんなに強い相手だろうと、祈願者だろうと時を止めてしまったり、時間を遅らせてしまえば好き放題出来ると勘違いしてる本物の大馬鹿達の一人、兵士ザック・バラン。自身にも時間呪をかけて強化出来た者達だけが住まう魔の巣窟の中では、下級の奴よ」
やけに詳しい説明が続く。
「そもそも下級の癖して、私が生まれる前からずっと生き残ってる熟練者ってのがナンセンスなのよ。口や行動は褒められたものじゃないけど、戦闘センスだけは見習いたいところね」
「知り合い、なんですね。でもそんな危なそうな奴なら、倒しちゃえばいいのでは?」
「イイ、私は挑戦者であって人殺しになりたい訳じゃないの。いくら雑魚だからって」
「テメェら! 覚えとけよ!」
「まぁ、ああやって勝てない相手とみるとすぐに逃げる訳で。無駄に殺す必要なんかないの、もぅアイツらにやられる挑戦者なんか残っていないしね……」
そういえば、俺も一度人型の敵と出会ったが、まさかアイツも国の人間だった? スクロールを使い逃げされたが、今の話を聞いていると高い確率で間違いないだろう。
「まぁ、良い事もあるわ。何故か国の連中が逃げた後には」
「後には?」
「下へ続く道が開けるのよ」
「ぉぉ」
先ほどまでなかった大扉が壁に出現している。
「イイ、知っているとは思うけども次の階層からは油断禁物よ」
「第二階層、か」
「ええ、ダンジョンの意思が強く反映されだすから。どんな対策をしていたらベストなのか、私達はまだ知らないのだから」
「なるほど。マルムを探す前に第二階層に降りたら安定するまで定点狩りと洒落込むわけか」
「うん、そういう訳。まぁ速攻で攻略してしまうのも手なんだけどね」
第一階層についての難易度は、RLの普通にプレイしていた時と変わらない訳か。
しかし、現実で動かしているだろう俺の体は一体どうなっていることやら。
そこそこ無茶な動きや速度対応をしているが、まさか本当にキモイ動きで動いているとか無いよな?
……脳のイメージをトレースして動いていると、そういう事にしておこう。




