054.スペースユニバース(9)
「おっ、戻ってきた。おかえりイイ」
没入時の生成されていく感じはなく、まるで今まで眠っていて意識が覚醒してゆく、そんな感じで俺は目を覚ました。
「ん。ララ、おはよ」
「マルムはそっちにいけた?」
「……ああ、確かに来た。認めるしかない、のかな……」
ふと頭上を見上げると、光の粒が収束していきポンッと音を立て俺の腕にソレは収まった。
「もう、動かなくなったと思ったらこっちに戻ってたなんて、うちを置いてくなんてひどくない?」
「あーこのパターンは」
裸で再び舞い戻ったマルムは俺の首に腕を回すとギュッギュッと抱き着いてくる。
そして、頭の上にハラリと下着や衣服が次々に落ちてくる。
「いややわぁ、またうちの服被って」
「わざとじゃねぇよ! ララ、そんな目でみないでっ」
「いえ、大丈夫ですよ。私もイイに落ち度はないと思いますし」
「……人の妻をいつまで抱いているつもりかな?」
「いやいやいやっ、ほら、マルム降りて降りて」
「そやね。タタン、ただいま。そしてサヨナラや!」
「はぁ、やはり何か余計な願い事が混ざってますね? まぁ僕にはまだ20の妻たちがいるからね、良いよ、イイ君のところへいきなさい」
「流石タタン、物分かり良くて助かるわ!」
どこから突っ込めば良いのかわからず、話を戻す。
「とにかく、この世界も現実に通じているって事は理解したよ。運営が何を考えてこの世界にRLとして繋げたのかとか、宇宙での抗争とか、村と国の抗争やら、後は何だ? やっぱり時のダンジョン攻略が一番に来るのか? そうだよな、そうしなきゃ俺は戻るにも戻れないしな……」
俺が一人で問題点をあげだすと、タタンは何を? と不思議そうな顔をして俺に言う。
「イイ君、目先の問題はそれだけじゃないだろう?」
「ん、というと?」
「マルムが重封されるんだから、すぐに救い出してほしいんだけどね?」
「そうだぞ、うちを助けてくれんと困るで? うちはイイを食べたいんや!」
「ん、食べたいって聞こえたような」
「ララ、何かのきき間違いだよきっと。で、だ」
で、だ。
マルムのウィズユー、タベタイの複合祈願によるダンジョンが出来るのか。
「そのダンジョンってのは、すぐに見つかるものなのかな?」
「そこは任せておくれ。僕たちは色々と攻略法を求めて色々手に入れているからね。例えば」
ピンアウトさせた次の瞬間、ボトボトボトッとスクロールの束が出現していた。
「これも小祈願の一つで、今は僕達管理者が扱えるスクロール複製さ。元がいるけど、一つあればいくらでも複製出来るんだ。人気なのは空間断斬って名付けたスクロールだね。光の範囲内にあるものに対して聖なる物理ダメージを継続して与えるっていう優れモノだね」
「あれって属性付きの物理系なのかよ」
「そうだよ。魔力消費も1だから、皆10本持っていくのが冗長化しているね」
「みんな、っていうとララ以外の挑戦者もいるんだっけか?」
ほかにも挑戦者は複数いるとのことで、誰がいつ帰ってくるかなどの連絡手段はないとのことだ。
ダンジョン内の時間はくるっているし、しょうがないといえばしょうがないのか。
「なぁイイ、うちの事、助けてくれるやんな?」
俺の服を掴みながら、未だ衣服を体に押し当てるだけのままの姿でマルムは確認してきた。
俺がRLの世界をVR世界だと決め込んだがために、マルムは現実に顕現して証明してくれたのだ。
ならばやるしかないよな?
「任せろ、必ず迎えに行く」
「ああ、待ってるで!」




