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045.パトロネスアンデット(6)

「朱き大地の奥底より」


 声が震えるのがわかる。


「神の怒りが天を貫く」


 視線だけを俺に向け、鋭い眼をギラギラと輝かせながら大股を開くように尻もちをつくとジャリ、ジャリと鎧を地面に引きずりながら後ずさりをしている。


「イードの魂」


 それでも俺の歩くスピードの方が速く、その間合いは徐々に詰まっていく。


「ヒ ネ ホ ア ヒャ ゴ ハ ス サ ネ カ フ ヒ バ」


 呪文も中盤まで差し掛かると、ラーシャさんは未だエム字開脚をしたままクツクツと笑い出した。


「くくっ、くくくくっ、あはははははっ……私をヤル気? 私も焼きが回ったな、見ず知らずの君を助けた時から決まってたのかしらね? 出し抜かれるのも、当然、だよね……」


 徐々に声が弱まっていく。

 しかし、二人しかいないこの空間ではその言葉が全て耳に入ってくる。


「ロウ リー ホハ カエ アー ズマ アーク」


 詠唱も終盤。

 俺はアイテムボックスから大斧を取りだすと、ラーシャさんの正面にソレを掲げて見せる。


「おいおい、君ってやつは……」


 容赦がないね。そう、最後に呟いていた。

 じゅわり、と大地が湿り腕を上げる体力も残ってないのか、ギュッと目を瞑った姿が目に移り込む。


「祝福を」


 そうだ、俺はローグライク(うばうもの)にならなければならない。



 だが、誰が奪うだけだと言った!?

 プレイスタイルは、俺が決める!


 ガンッ、と大斧の刃を横倒しにした状態で大地に放り捨てると、俺は完成した詠唱を発動させた。


「マジック!」


『アイテムと魔法の融合を確認、構築ビルドより魔法付与マジックエンチャントを理解しました』


 火球により大斧の鉄部分がジワッと熱されたそこに、ウサギ肉を何個も何個も置いていく。


「ラーシャさん、ジャンジャン焼くんでどんどん食べていってください」

「……はっ?」

「これ食べると、体力が2回復するんで」


調理技術フードメイカーを理解しました』

救世者スクウモノを理解しました』


 次々に流れるログを無視し、俺は目に映るソレを確認した。


「うさぎ肉(焼):ステーキこそ正義。

         回復量は2に抑えられられた理由がわかるかい?

         そりゃ簡単さ! 沢山食べたいからね!

         体力回復2」


 手に握っていないソレを鑑定した俺は、ラーシャさんに告げた。


「おいしいですよ、食べましょう」


 何とか腕を動かし、篭手にしていた折れた剣をウサギ肉(焼)に突き刺すと、ハムッ、ハフッホフッ、と口の中であつあつのステーキを転がしていた。そして。


「美味いな、ああ、私達は生きているんだな」

「はいっ」


 そして、最後のログが流れる。


最高難易度ヘルダンジョンを選択しました』

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