043.パトロネスアンデット(4)
俺は一度死んだ事による、心の傷を忘れるように駆けた。
今はあの痛み、苦しみよりも勝る高揚感が優先していた。
何度でもヘルダンジョンへ挑める状況、デスペナルティが無い状況(厳密には心への絶大なる負担がつきまとうが)、そしてこのイベントは必ず勝てる勝ちイベントだということ。
怯み、怯えて震えている必要はどこにもなかった。
出来る時にはヤル、それが俺のポリシーともいえるのだから。
第二層へ体が生成されると、苦戦するラーシャさんの姿が視界に入る。
フランケンは消滅せず、3体とも頭を壁に埋め込まれ微動だにしなくなっていた。
だが、死神リーパーを倒すまで至らず今まさに大鎌が振り上げられていた。
いくらラーシャさんの体術が強くても、首元にアレを添えられたら回避する術はない。
今魔法を打ち込めば、爆風がラーシャさんごと巻き込んでしまうだろう。それでも、俺は決断する。
「ラーシャさん! マジック!」
詠唱の後に他の言葉を挟むと不発する危険性はあったが、どうしても忠告しておきたかった。
俺の言葉が届いたのか、首の後ろに回されようとしているにも関わらず正面にガードを組んで見せたので、俺の意図は伝わってくれているようだ。
大鎌が首筋に添えられたと同時に、俺の火球は死神リーパーを爆発させていた。




