034.ウィルテイクユゥ(11)
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「ああ、なんだ……セレブごっこはおしまいかい?」
「うん……だって、お兄ちゃん何だか辛そうだったし」
深い眠りについたかと思っていたが、まだ目を瞑ってから数分しか経っていなかった。
時計をみることないまま、俺は隣で頭を撫でてくれる桃に視線を移す。
部屋着に着替え、機嫌を悪くしていた俺を心配して付き添っていてくれたようだ。
「心配かけてごめんな、別に桃が悪いわけじゃないんだ」
「そう、なんだ。良かった」
水着姿でセレブっぽいと、口調もセレブっぽいという理由だけで兄様とかいってた、冗談めいた空気は既にここにはなかった。
「お兄ちゃんの体、硬くて、大きくて」
「ん……?」
「だけど、私としては興味深々というか、その、凄いんだね……」
この小学生は一体何を言ってらっしゃる?
「後、私お腹もすいちゃった」
そういえば俺も小腹が空いた。感情に構わず、空腹は襲ってくる自分自身が恨ましい。
起き上がると、トランクスから出てきてはいけないものが出てきており、それを凝視しながら指でつつく桃が居て。
「セウトー! 完全にセウトだからっ!」
「えへへ」
笑ってらっしゃる。最近の小学生はこういう知識だけは豊富なようで、しっかりと興味津々といった感じが居たたまれない。
「と、とにかく一旦離れて! ごめん、俺も悪かったから!」
意識改革だ。
普段通りと思い行動するのは悪くはないだろう、だが親しき中にも礼儀ありという。
俺は誰かが居る時は自室でも服を着ようと、そう思うのだった。
……そう、意識改革が必要なのかもしれない。
ノーテンが伝えようとしたことは、俺の中では整理しきれては居ないが、確実に一つのヒントとして心の中に留まっていた。
ローグライク、か。
こんな発想を頂いたまま、俺は桜を連れてRLの攻略が出来るのだろうか?
俺の抱く悩みは増える一方であった。




