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003.レディ(2)

 遊ぶ前と言えば、食料調達である。

 が、食料を探すも在庫は無く、アップデート後の世界を堪能したいという思いを抑えスケジュールを一瞬で再構成する。


 スマホのチラシアプリを開いた俺は、思いつくままに特売品をリストアップしていく。


 卵、もやし、ネギに米。後はキュウリにオクラに……。


 ジャージを履き、無地の青茶色のVネックシャツを着ると財布をポケットにつっこみ外へ出た。

 想像以上に蒸し暑く、外の空気に地肌がさらされた瞬間ムッと顔をしかめてしてしまうも、徒歩10分の場所にあるスーパーへと向かった。


 特に外に出てイベントというイベントもなく、無事帰宅すると米を仕込み、ビニール袋の中にキュウリとネギを刻んだもの、醤油とカツオだしを適量注ぎ込むと冷蔵庫へと放り込んでおいた。


 グイッとキンキンに冷えた水道水をあおると、スマホで最後の仕上げとばかりにタタタッと操作を行う。


『フレンド募集、最終目標ヘル10階層突破』


 IDをそえ、そんな文言を書き込むと俺は限界とばかりに睡眠についた。




「うぇっ、寝すぎた!」


 誰に言うでもなく、飛び起きた俺は時計に視線を移す。現在が午前2時だという事を確認すると、外出時に来ていたジャージとシャツを脱ぎ捨てパンツ一丁になる、が。


「うん、履き替えなきゃな」


 と再び独り言を呟くとパンツを投げ捨て新品を取り出した。

 まさしく、勝負パンツである。




『………………DL中………………』


 質素なフォントでDL中を告げる文字が体の周りをグルグルと周回する。謎の技術といわんばかりに、回転する文字の動きをリアルに感じる事ができる。


「もうちょっと冷たい風で表現してくれてもいいだろうに」


 そんな事を思いながら、待つこと数十秒。


 ブワッ、と視界が広がる。


 質素な石作りの部屋は、アップデート前と違い少しだけ物が増えていた。


「椅子に大鍋に、それに棚か」


 声に出した内容がビャッ、と効果音と共に吹き出しとして頭上に表示される。ふと、そんな吹き出しをみおると『イイ』という文字が被るように表示されている事に気が付く。


 ふむ。どうやらキャラクターネームが頭上に表示されるようになったようである。

 だがしかし、邪魔なので指をピンアウトさせコンソールを呼び出す。

 四角いアイコンが渦を巻き展開されると、指先でソレをグルグルさせて目的のオプションまで到達させると、サッとキャラクターネームをオフにしてのけた。


 と、同時にフレンドのアイコンに!マークが表示されている事に気が付く。


 即、フレンドアイコンをクリックするとフレンド募集をしてからものの数秒という時刻に1件の申請がきていた。そう、たった1件のみの申請が届いていたのだ。


「ちっ、最終ログイン時刻は午後10時、4時間前に落ちてやがる」


 折角の初協力プレイを諦め俺は独り、アップデート後の初没入を開始した。

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