029.ウィルテイクユゥ(6)
簡易ピザを作るべく、餅をレンチンしつつ上に乗せる具材を刻んでいく。
調味料を棚から取りだすと、溶けた餅に牛乳小麦粉を足して混ぜ合わせると少々力を入れてかき混ぜる。
「ミウラ神、か……」
先ほどの会話からも、レイドボスを同時に三体相手にしているとか言っていたが、本当にそんなことが可能なのだろうか? そして体内時計を盗めって、一体……?
きっかり1分程こねて生地になったソレを広げると、上にケチャップ、フレッシュトマト、チーズをふりまき、更に上から粉チーズをふりかける。
ここからウインナーを細かく刻み、ベーコンブロックを大きめに切り分けると、ランダムにパラパラッと乗せる。
後は用意していたオニオンとアスパラを等間隔でのせると、アルミホイルでくるんでトースターに放り込む。勿論、加熱済である。
さて、ここまでの時間はざっと15分くらいか? 時計を確認すると、17分程を使用していた。
我ながら手際の良さを褒めてあげたい。
「2分のズレか。でも大体はあっているし、こんなもんだよなぁ?」
作業をしながら時間を予測する。いや、今回に限っては時間をある程度心の中ではかっていてこれである。何かをしながら一分一秒を正確に刻み続けれる人間なんて、存在しないと思いたい。
焼き時間の間に、各自の飲み物の用意をする。
師匠はティーが好きなのでアールグレイを、桃は何が好きかわからないのでキュウイスムージヨーグルト、そして俺は牛乳。共通に使えるよう麦茶をテーブルに置くと、後は焼きあがるのを待つのみである。
「ん、良い匂い……?」
「おや、起きたか幼女よ。わが弟子が供物を用意しているから、心して待て」
「くもつ? ふわぁ……ピザの匂いだ!」
「くっ、幼女には難しい単語は意味を成さないか。まぁ良い、宴といこう!」
「おー!」
何やらテーブルの方で勝手に盛り上がり出しているが、俺は二枚目を焼くべくトースターへ次弾を装填するのであった。
で、この二人は腹丸出しでベッドで眠りこけるとは。無邪気というか、男の前で無防備すぎますよ。
まぁ、俺は既に……ふっ。
後片づけも終わり、そんな二人の寝顔を確認したら椅子に座りリクライニングモードにして目を瞑る。
色々あった。
たった数日で、何かが変わろうとしていた。
そして、その変化に俺は取り残されないよう、必死にもがき抗わなければいけない。
相棒の為にも、そして俺の為にも。




