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214.真ラストダンジョン(25)

 幾千もの光の線が交差する青い空の果てが見える大地。

 ここが第七階層、心読しんよみ祈願者ボスが居る表層。

 少し先に見える街の中にある四階建ての建物の頂上が第十階層に相当し、そこに居る祈願者を倒す、もしくは救えば攻略完了、つまり地球がこの大地に呑み込まれる危険が去る事を意味する。


 VRゲームのはずなのに、現実とリンクするこの世界。

 私達は一度、地球が目の前で呑み込まれるのを見てしまった。戻ろうにも、戻れなくなるあの現象は間違いなく生身の体が欲し事消え去った事を意味していた。大切な物も、大切な者も、大切な色々が全て消え去ってしまう。もう一度あんな体験したら、間違いなく心が壊れてしまう自信が私にはある。


 もうすぐそこに、私達のゴールがあるのだ。


「何か空でも始まってるなぁ……これは急ぐべきかな? この後の行動について、皆に説明しておくよ」


 イイがイイの仲間たちに向かいこれからの行動を説明する。

 内容は既に私達は知っている事だけど、齟齬が無いように改めて説明を聞くことにした。


「馬鹿正直にこの第七階層から第九階層を突破しようとすると数か月、数年かかるおつかいクエストが発生する。加えて、空から別の星々の抵抗戦に巻き込まれて余計にややこしくなる。ならば実力行使で突破する案も考えたが、第七階層では住民たちの心の声が全て俺達に伝わり、第八階層からは相手にこちらの心を全て読まれてしまう。つまり、力で解決しようとしても全て行動が読まれるため素直に手続き(クエスト)をこなしていくのが一番早かったんだ」


「ちなみに、人が死ぬ時の声は正直最悪だ、第七階層での人殺しは悪手も悪手。全部聞こえちまう、第八、第九階層はそのトラウマをうまく突いてきやがる。だが」


 イイは呼吸を深くしたような、気がする。


「ターゲットの居る建物の中に居る人は全て敵だと認識しろ。第七階層の職員百名、第八階層の役員十二人、第九階層の支配者二人、そして第十階層に居る祈願者一人。総勢115の命を全て奪い尽くす総力戦。下策も下策。でも、それでも最初から決意して殺るしかない。皆には嫌な思いをさせちまう、想像を絶する罪悪感に、つみを背負わせちまうだろう」


「でも、それでも! この星は地球を、それ以外の莫大の命を食らいつくしてしまう災厄だと割り切れ! どっかのヒーローや主人公のようにカッコよく攻略クリアする術も時間もねぇ! 今回、俺達には心強い仲間が多数居る。地球が誇る、最強の面々がここに居る!」


 正直、今いるイイの仲間たちだけで強行突破出来るんじゃない? という疑問がありつつイイが指さすのは私達。


「人の醜い声も、からめ手も、それらを乗り越え己の技術と心で勝利するのがプロゲーマーだからな!」


 なるほど。

 ふふ、面白い事を言う。

 ブリーフィングで嫌というほど話し合いをした。

 この第七階層からは私達の居る地球とほとんど同じ。人の命も、生活も、家族も子供も、その全てが現実リアル。この世界に住む人たちからすれば、部外者が突然市役所に押し入りテロ行為を行われるのと同意義だという事を。悪感情に心が蝕まれるだろうと。

 だけど、この瞬間だけプロゲーマーとして攻略すると。

 どんな罵声も、どんな感情も、それら全てを突破して勝ち取るのがプロゲーマーなのだ。


 誰よりも辛さを知り、誰よりも乗り越える心を持つ私達。

 それ故に絶対に私達は悪にはならない、どこまでいってもプレイヤーなのだ。

 プレイヤーは悪でも正義でも、罰も罪も無い。ただ、ひたすらに目標に向かってルール上を走り続けるのだから。


 人が生み出した最大の力(ルール)を順守する最強の存在なのだから。

 但し、セキュリティホールはつく、そうやってからめ手を覚えていくのだから。


「ふふ、ハハハ! 大丈夫、私達プロゲーマは地球を守るというミッションを達成させるため、115の命を背負うわ」


 そう、私達はこれから第七階層および第八、第九階層を強行突破する。

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