213.真ラストダンジョン(24)
第四階層からは拍子抜けするように攻略が進んでいった。
「おーい、連れ帰ったぞぉ」
「やっと戻ってきた、って多っ!?」
良いリアクションをしてみせたのは、ととと、という名の少年。その他にも数名BBQしながら呑気に酒盛りしている面々が居た。ドーム状の第四階層は既に攻略済み状態のようで、下る階段が部屋の中央に出現している。
情報では無敵を誇る祈願者プレイヤー、才神神姫が待ち構えて居るとの事だったが……どんなプレイヤーなのか、ほんの少しだけ興味があっただけに残念だ。
そして第四階層攻略時に負傷したのだろう、筋肉質の男は肉をクーコに食べさせてもらうという甘々な展開を披露していた。
「あーんして」
「お、おう」
パクリ、と肉を食べた瞬間『つめでぇ』と大声をあげていたが、近くに居た身長の高い男に拳骨を見舞いされ、地面をのたうち回っていた。
イイの配下だという、アウト(BBQを出現させている人物)に、ジャンと同じ能力を持つという『ととと』という少年、春一番をみた瞬間性能を倍化させてしまった先ほど拳骨を放ったソドミという男。
他にも地面を転がっている筋肉質なマッスルという男に、酒瓶をひたすら煽っているミミコという女に宝石トークをとろろ昆布と始めたジュエル。それに先ほどまで敵だったギードにクーコと、個性的な面子が一気に増えた訳だけども。
『この全員が、私以上の可能性有りとか冗談きついわ』
というのが私の心情である。
地球上でも、私よりも尖った能力持ちは何人もプロゲーマーにならずゲーム界に潜んでいる訳だけど、それでもこうもポンポン格上が出てくるのは面白く無い。
……そんな私情を挟んでいる暇もない、か。
少しの交流の後、私達は合同でこのままこのダンジョンの攻略をする事になった。
第四階層から更に下の階、第五階層。
ミッションルームという事で、気にせず降りると思ったよりも狭い部屋の中で開始となり、ギュウギュウ詰になるというアクシデントがありつつも、ミッションを確認。
『ミッション:人と接触し続けよ。
ルール:地肌が他人と触れ合っている間はセーフ。
もしも離れ離れになった場合は、ファイアエレメントドラゴンが強襲します。
倒すも良し、ゴールまでルールを守るも良し。
ミッションはこの部屋を出た瞬間から適用されます。』
私達はファイアエレメントドラゴンとの戦闘が出来るのか! という、巨大モンスター討伐クエストを連想させ大いにやる気をみせるも、イイとその仲間たちに全力で止めとくように説得された。
勿論、私達だってここの攻略に二度と失敗するつもりはないので、自制心を保ってミッションを勧める事を了承した。
しかし、第五階層を突破後皆の口数が著しく減ったのは割愛するわ。
ジャンもジェも、カタリナさえもあんな事を考えていたなんて……いえ、今は考えないでおきましょう。
こうして進んだ第六階層。
待ち構えて居たゴーストシープがメェ、と鳴き近づいてきた。
敵かと一瞬構えるも、その瞬間ドサドサドサっと大量の何かが倒れる音が周囲からした。すぐさま、周囲を確認するとそこには気味悪いゴリラが何体も倒れていた。
「ニンゲン、案内スル」
何やら、第六階層も目の前の羊に案内されるがままに進むと第七階層への階段を見つける事が出来た。
敵もポップしていたが、何故か全てが睡眠状態で襲ってくる気配が無かったため、私たちは静かに進み続けた。
そしてついに、私たちは目的の居る大地に立つ。




