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204.真ラストダンジョン(15)

 凍えて見せる青年の姿に思わずあちら側の存在かと疑うも、現実の私の事をしっかりと把握しているからそんな事は無いと思考を切り替える。


 この没入デバイスに完備されている空調システムが冷風をビュウビュウ放っているのだろう、と自己完結してと。


「それで、さっきのは何? いえ、そもそも貴方達は一体?」


 遅れてやってきた男女二名。偶然なのか、あのゴーレムを瞬殺して見せた女性の名は、知り合い姉の名と同じである。まだ顔すら見てないそんな彼女が、腰に手を当て一息ついてみせるとこちらへと振り返った。


 巨大な氷塊が何処からか照らされている光源を反射して彼女の姿はうまく捉えられない。シルエットからは、中学生、もしくは小学生高学年程度の身長だという事実を突き付けられる。


『まさかあんなに小さかったなんて。さっき横を駆けて行った時はもっと大きく思えたのに、まさか私にプレッシャーを与えたとでも?』


 自身より巨大な力を持つ相手に対峙したさいに、相手がより大きく見える現象。

 現実にも、数名ほど私にプレッシャーを与えてくる存在は居た。

 最近会ったそんな一人に深浦ミウラという奴が居るが……はて、何故私はアイツに最近会ったのだろうか? いやだな、これが老いというものか。


 一人苦笑いをしつつ、近づいてくるシルエットの表情が徐々に明らかになってくる。そして、その顔を確認した瞬間、私は呟いてしまった。


「モモ……ちゃん?」


 そんな私の呟きを拾ったAIが、ププッと笑いながら教えてくれる。


「やっぱり、そう見えますよね」

「違うの?」

「ええ、あれは」


「貴方がダーリンの師匠様ですね、挨拶が遅れました。私、サクラっていいます」

「モモちゃん、ではないのよね?」

「もぅ! そんなに妹にそっくりですか? まぁ良いです、私達もこの攻略に付き合います」


 色々と聞きたい事があったが、今は純粋に攻略を先にすませよう。すべてが終わったら、何故サクラちゃんがここに居るのか、そしてその隣でガチガチと歯を鳴らしながら凍えて見せる彼が何者なのか、ゆっくりと聞かせてもらう。


「わかったわ。私としても貴方のような協力者は歓迎よ、サクラ」


 ジャンとジェ、カタリナは思わぬ助っ人の登場にも特に気に介していないようだ。先にサクラちゃんと遭遇したAIちゃんの居るパーティの方も既に受け入れているようだし、何も問題は無いだろう。


「そして君も、宜しくね」

「は、はいっ!」


 ビシッ、と背を伸ばして応答してみせた青年は、おもいっきりサクラに足を踏み抜かれ悶絶していた。


「さっ、さっさと終わらせていきましょう」


 次の階層はドッペルゲンガー二体に、入り組んだ巨大マップ。

 さらにデバフで1分毎に体が肥大化していくという、恐ろしいマップ。

 皆も次の階層の情報は知っており、それぞれが準備運動レースのそなえを始めるのだった。

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