表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/216

002.レディ(1)

 矢で全身を貫かれた感覚が未だ拭えず、アップデートが始まるまでにもうワントライする予定だったのを切り上げ没入デバイスから抜け出した。


 防音ダンボールに包まれたソレから出た瞬間、全身汗だくになっていた事に気が付く。

 夏の真っただ中、冷房が止まり部屋の中は蒸し風呂のごとく熱気を溜め込んでいた。


「しまったな、タイマーつけたの忘れてたぜ」


 ついついプレイにハマってしまい次こそは、次こそはとプレイを重ねる内に歯止めが効かなくなっていた。冷房のタイマーが切れたら暑くて遊びどころじゃなくなるだろうと安易に考えた自分の行動が恨めしい。


 冷房をつけなおすと、机に向かいノートをめくる。足の裏が未だにVRデバイスの一つ、移動床ローリングターンの感触が抜けないままペンを握り意気込む。


「いざ」


 宿題をこの26時間という制限時間メンテナンスで仕上げ、アップデート後のプレイに備える必要があるのだ。クイッと体重を預けた椅子を前に移動させようとするも、腰移動をしようとしてしまい体だけが無意味に前進する。


 いけないな、と頭をボリボリかきながら思い返す。あの段ボールの中の移動床ローリングターンは全方向へ対応したキャタピラーのような床だ。材質は聞いたこともない物だったが、砂浜のような感触の床でゲーム内の地面とリンクしていて硬くなったり柔らかくなったり。冷たかったり熱くなったりと不思議な床である。


 腰回りには輪があり、そこから伸びるロープで腹巻のようなデバイスと接続すると、体がその場に固定されたような体感になる。そこで、このロープに体重を預けて足を軽く動かして移動するテクニックが扱えたり、このロープを利用した腰移動ムーブが非常に重要になってくる。


 専用デバイスのグローブを両手にはめ、瞳を覆うような眼鏡型のゴーグルを装着すると、VRRLG、RLローグライフの世界へと没入が完了する。


 段ボールの内側に取り付けられたスピーカーから鳴り響く音響効果は、高級スピーカを買うよりよっぽど良いものといえる。それがたったの39,800円なのだから、人気が出て当然である。


「っぁぁ!?」


 パンツ一丁(パンイチ)のまま、軽食に用意していた菓子パンとぬるい麦茶を流し込むと既に30時間以上の時間が経過していた。そして、夏休みの課題も全てこなした俺は気合を入れ没入の準備にとりかかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ