194.真ラストダンジョン(5)
「これからこうするネ?」
矢の檻に囚われた事に対して、ジャンが腕を組みながら私に問いかけてくる。
「そうね。菜茶ならこんな状況でもパパッと解決しちゃいそうね」
カタリナが更に続いた。そしてジェまでも。
「イクラさん、壁蹴りで登ったり出来ないですか?」
と、三人が同時に私を頼ってくる。
確かに、確かにだ。
初見のゲームだろうと、何とかしてきた私ではある。
あるのだけども、無理ゲーをどうにかしちゃうような奇跡の力なんて私は持ち合わせていない。
二年前の私ならば、不可能は無いと何かしら成し遂げていたかもしれない。
しかし、今の私はそんなに上等な存在ではない事を理解している。
でも、だからこそ。
前回全滅した時のような驕りは無く、恥も無く、そして一人で悩むという事も無く。
私は素直に打ち明ける。
「ごめんね皆。私もこの状況をどうしたら良いのかわからないの。だから」
一瞬、次の言葉が喉につっかかるも、私は言葉続けた。
「だから、皆の知恵を貸して。このゲームは、個人で攻略するにはあまりにも難しすぎるの」
私の言葉に、驚いたような表情を見せた三人だがスグに笑顔を見せてくれた。
どうやら、こんな私でも幻滅はされなかったようだ。
「ふふっ、マイティに頼られる日が来るなんて、私達戻ったら自慢できるネ!」
「ジャンはもう出番終わったから、今から頼られるのは私達」
「なっ、何いうネ!」
「二人とも、先日私が菜茶と日本の寿司を食べに行った仲だと知っての喧嘩かな? ふふっ、ベリーソーリー! 菜茶は私に向けてのメッセージを」
「聞いてないネ! いつのまにマイティと仲良く」
「カタリナ、今度レースゲームの大会で潰すヨ」
「Oh、私の練習相手にでもなるって? 良いわ、おっさんが乗るカートゲームでも近未来カ―で超加速する奴でも、何でも相手になってあげるわ」
「「ツブスヨ」」
何だかあらぬ方へ話が向いたような気がするけど、きっと私に気にするなと言ってくれてるだけだわよ、ね。
「三人とも、レースゲームくらいなら攻略が終わったらいくらでも付き合ってあげるから、今はここを抜け出す知恵を絞りなさい」
「ヒッ、マイティ相手は得意分野でお願いしたいヨ」
「私も別のゲームでお願いします」
「菜茶とついにレース対決が出来るのね! 夢みたいだわ。あぁ、何か乗り物でこの壁を乗り越えれないかしら」
カタリナの思いつきに逡巡するも、手持ちで使えそうなのは戦闘機のスクロールのみ。
しかし、滑走路がなければまともに飛べやしないので候補から外れる。
「私、ずっと破壊する事考えてた。そっか、飛び越えちゃえば良いんだ」
「何か良い案でもある? ジェ」
ドヤ顔をして頷くジェだけど、服くらいは着てから発言して欲しかった。
「昔、日本のゲームで大陸移動に面白い物をつかったものがあった」
昔のゲームで、大陸移動に使う? 何だろう、まだピンとこない。
「それは、中に入ったバンッ、と射出したキャラ達が空を舞い、着陸は大地へ衝突っていう凄い仕様だった」
あー、アレね……いや、アレって現実的に考えて。
「ハハハ、ジェは馬鹿ネ! 馬鹿! 人間大砲で移動とか、体がバーンなっちゃうネ!」
「に、人間大砲? 射出時にバーンってなっちゃいそうね」
カタリナも引き気味に突っ込むが、私は間髪入れず声に出した。
「ハウル」
「算出完了。人間大砲、調整さえうまくすれば5ダメージ程度で十分に飛び越えれるシミュレート結果が出た。菜茶、実行するか?」
流石ハウル。
無理ではないってシミュレートしてくれただけで大助かりよ。
「わかったわ、ジェ、その案採用よ! 銃の支配で大砲を生成してみせるわ」
こうして私達はここを突破する為、人間大砲体験をすることになったのだった。