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177.ラストダンジョン(23)

 そして遂に。


「良くもまぁここまで来たものね、時の支配者」

「何の嫌がらせかと思ったよ、全く」


 肩をすくめてみせ、俺は言葉を続ける。


「240リミットの脅威を招いた、心読しんよみの祈願者さんよ」


 五大ヘルと呼ばれる一つ、心読しんよみの祈願者が240リミットの脅威を招いた張本人と対峙する。

 そんな祈願者である彼女の願い事はわからなくもない。


「ふふ、あなたも自分の事ばかり。本当、死ねばいいのに」

「おいおい、いきなりキツイなぁ。ここまで一年もかけてやってきたってのに」

「本当、馬鹿よね? あんなムカつく役人たちなんか殺してここまで来たら良かったのに、ねぇ? 何故、あなたはあんな汚い心の声を聴き続けて平気なわけ?」


 俺の心を読んでなお、そんな疑問を抱くかい? 俺は自分のプレイスタイルを曲げたくないだけだよ。


「そう……本当、ゲーマーって気持ち悪い。どうしてそう前向きになれるのかしら、早く私の前から消えちゃえば良いのに」

「酷いな。俺だって一年も七層、八層、九層で面会手続きでたらい回しにされ続け、何故か申請を続ける俺へ悪感情をぶつけられて。そんな手続きを一年かけてようやくここまできたってのに、何も平気だったわけじゃないからな?」

「酷い人。口では何だかんだ言って、頭の中では私を殺す方法ばかし考えている。大丈夫よ、私は無抵抗に殺されてあげるわ。だってそうでしょう? ここまで辿り着ける人は居なかったし、仮に辿り着いたとしても私を殺す気力すら残って無いのだろうし。私はもう疲れ果てたわ、もうこんな世界はうんざり。世界も殺しつくしたし、後は私を殺して。自分じゃ怖いの、だからお願い」


 目の前の痛々しい女の子に、俺は手をかけないといけないのか。

 何が救世者だ……こんな祈願のろいに苦しみ続ける女の子を殺す事しか出来ないのか。


「確認、する。お前は無抵抗に殺されてくれるん、だな?」

「ええ、時の支配者。私はここに来た者によって救済されるの、生という呪縛から解き放たれるのっ! アハ、アハハハハ、やっと、やっとよ、アハハハハハハ」


 一体どんなけ人の醜い心の声を聴き続けて生きてきたのだろうか。

 迷う必要は何一つないんだ、ゆっくりとおやすみ。


「いやな、感触だ」


 人を斬るのは、いつになっても慣れない。

 返り血に、思わず吐き気が。


「主様、茶番はそろそろ良いのかしら?」

「……ああ、道順は見えたよ。後は皆を信じるだけさ」

「本当、馬鹿な主様なのかしら。次使う祈願は、主様は耐えれないのよ」

「知ってるさ、俺は帰る場所(ちきゅう)さえ健在なら、いつかは帰れるって信じてるからさ」

「……本当に馬鹿なのかしら。私たちの気持ちをもう少し汲み取るべきかしら」

「はは、俺達はずっと一緒さ。そうだろう?」

「……そう、よ」


 240リミットの脅威、いや五大ヘル、心読しんよみのヘルダンジョンを攻略した俺は祈願する。


「攻略者達、その鍵となる人たちへ。聞こえますか、俺は直接あなたたちの心に話しかけてます。この心の声はリセットされた世界でも心に残ります。そして、現在までの時間を皆にプレゼントします、だから俺からの最後の願い事を聞いてほしい」


『地球を、救ってくれ』


 俺はヘルダンジョン十階層で祈願する。

 そして全世界の時間を巻き戻す。

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