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169.ラストダンジョン(15)

 全く無事では無いが、無傷で扉をくぐると最初に入った時と同じような部屋があり、その先には次の階層へ続くであろう扉があった。


「私、帰って良い?」


 クーコがプルプル震えながら言うも、先ほどまでテンションがどこまでも上がっていた事を知っているので照れ隠しだという事はお見通しである。


「帰る、私帰る」


 ぶんぶんと体を振られ、念のため声に出して確認をする。


「本当に、帰るの? 今夜が楽しみでしょうがないってあの言葉は」

うるさい。早くして」

「……ほんとうに?」

「早くして」


 おおう、何やら本気で帰りたい様子。

 思わずひるんでしまいそうな程の眼圧がんあつに、素直じゃないな、と思いながら最後にもう一声かけてみる。


「今夜までには戻るんだよね?」

「戻る訳ないでしょ! 早くシテヨ!」

「お、おーぅ」


 クーコを戻すと、俺は頭を捻る。


「なぁギード、クーコさっきまで乙女モードだったよなぁ?」

「ん、私にはあんな子供の思想は思い出せんな。あぁ、これで私達二人っきりだね!」


 言ってるそばからお前が乙女モードに入るんじゃありません。

 しかし、心の声が丸々聞こえてたのに何故帰りたがったのだろうか。

 俺には乙女心というのは一生理解出来ないかもしれない。


「さっ、次だ次」

「あっ、ちょっと!」


 何だよ、手を離しただけでそんな名残惜しそうな視線を送ってくるなよ。

 下手な下心より、真っすぐすぎる想いを寄せてくるギ―ドの表情に、一瞬可愛いよな、とか血迷った思考が脳裏をよぎる。良かった、今も心が読まれていたら間違いなく毒されていただろう。


 何て危ない階層なんだ。


 こうして俺達は第六階層へと歩みを進めた。




 第六階層。


 第一階層に似た造りの地面が土で、壁も土。ついでに天井も土なオーソドックスなダンジョン構成。

 道幅も十分にあれば、謎の光源もバッチリある。

 まるで第一階層へ本当に戻された錯覚を覚えてしまう。


「ここ第六階層、だよね?」

「どうだろう? ずっと私達上にのぼってたし、案外本当に上の階層へ戻ってきてたりね」


 まさか。

 今までの経験上、上の階層へ行く場合は上へと向かう『階段』として出現する。

 つまり、扉形式でマップ切替が発生した場合は次の階層と相場は決まっているのだ。


 でも、もしかして未だ知らないタイプのダンジョンだったならば。

 今まで遭遇したダンジョンが全体の1%にも満たない程の種類しかまだ把握できていないのならば。


「とりあえず注意して進もう」


 マップを見ても、自分たちを中心に1マス分の表記があるだけで、未踏だ状態なのだからここは注意して進むに越したことは無い。


 複雑に分岐する道を適当に選びながら、マッピングを進めていると一匹の羊が視界に入った。


「あれは……ゴーストシープ? やっぱり階層は上の方なのか?」


 ゴーストシープ。

 通称羊。

 頭から生える二本の角に注意。

 気性は荒く、近づくとアクティブ化して襲ってくる。


「羊、だな。どうする? 私がさくっと倒してこようか?」


 どうにも気になるが、ここはギードに任せてみるか。


「うん、頼んじゃって良いかな」


 頼られたことが嬉しかったのか、親指をグッとたてると大斧を構え突進を始めた。

 でも、地獄ヘルモードはやはり甘くは無い事を知る。

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