165.ラストダンジョン(11)
第四階層。
俺は自衛のためにかけていたデバフを解除すると、体の巨大化が鎮まり思わずしりもちをついてしまっていた。
クーコとギードも、同様に座り込んでいた。
階層移動した瞬間に襲われなかった幸運に感謝しつつ、二人の状態を確認する。
「ハァ、ハァ……息が詰まるかと、思った」
クーコは問題なさそう、か。
氷漬けにされながら、こんだけ動けるのだから凄いものだ。
しかし、問題はギードか。
「腕を落とされるとは不覚だった」
悲痛な声でそう呟くと、落ちた腕を切断面にくっつけ詠唱を開始していた。
「癒しの斧よ、切断の理を癒せよ。マジック、恋する右手!」
あーそういえばコイツ、自己再生持ちだったか……。
「よし、治った。しかし胸がデカいと苦しいものなのだな」
おいぃ、ジャージのチャックあけて両手で触って確認とかするなよ、てか完全にソレ女性の胸だろう!?
「ギード、なんで戻って無いの?」
「さぁ?」
対してクーコも確認とばかりにジャージのチャックを下ろし胸元を確認するも、元の手のひらサイズに戻っていた。うん、クーコは可愛いからそれで良いんだよ?
「あっ」
俺の視線に気が付いたのか、さっとチャックを首元まであげてしまった。
恥ずかしいならやるなよモゥ。
「とりあえず、第四階層まで来たわけだけど、本当にこの先も付いてくるのか?」
「「うん」」
はぁ、全く。
でも、まぁこういうのも悪くは無いか。
しかしまぁ、この地形はアレだよなぁ。
周囲はドーム状の空間一部屋で完結されているようで、続く道は見当たらない。
ざっと、直径100メートル級の部屋にはモブの存在は無く、いわゆる中ボス部屋と呼ばれるタイプだ。
240リミットの祈願者が居た惑星自体はまさしく無限とも思える広さだったか、案外ダンジョン内の構造はオーソドックスなタイプが多いらしい。
マップの広さはそのどれもが小規模なものばかりで、ありがたいと言えばありがたかったが。
「そっか、なら宜しく頼むよクーコ、ギード。ちなみに、このタイプの部屋って何が起こるか知ってる?」
「「知らない」」
「ダンジョン主っていっても封印されてるだけだもんな……このタイプってのは、大抵強敵が出現する」
ほら、と言いながら部屋の中央を指さすと、淡い光柱が天井まで登る。
その中から、一人の人間が歩み出てきた。
また人型か、とやりにくさを感じながら光の柱が消えるのをジッと座った俺達は見守っていた。