161.ラストダンジョン(7)
第三階層。
今度は馴染みのある通路型、いわゆるある程度の距離を進むごとに曲がり角にぶちあたるマッピングのし甲斐があるオーソドックスタイプだった。
前後を見渡すと、大体一つの通路は20メートルくらいか。1マスが10メートルとしたら、この2マス分は真っ直ぐと突き当りの曲がり角のみとなる。
縦、横幅も3メートルくらいはある。槍程度の武器くらいまでなら余裕で振り回せそうな広さがあった。
「こりゃ、少し危険な階層に当たったなぁ」
「ん、どうして?」
クーコが問いかけると、俺は持論を展開する。
「240リミットの脅威は、何が脅威って10日間かけて倍化していく現象、更に成長しきったら全てを飲み込むように移動する性質を持っている馬鹿な発想故の災厄なんだよ。で、この入り組んだオーソドックスなダンジョンの広さで、何の脅威に見舞われると思う?」
「……蟻とか?」
ニアミスッ! それは既に俺が(主にとととが)倒し済だ。
「うん、そういう可能性もあるな。でも、第三階層から侵入者を確実に殺しにかかってくるのがヘルダンジョンだから、もっと嫌な想定をしよう」
「強敵が現れる、とか?」
「まぁ、それくらいの脅威なら二人に任せても問題無いだろうけど」
ならば何? と二人は首をかしげてみせる。
「お前たちは自分のダンジョンの事は理解してないだろうけど、教えてやろう。クーコの第二階層は侵入した時点で氷漬けにされるっていう、極悪ダンジョンだったよ。ギードのところは、ひたすら戦闘狂、それも生身の人間が『敗北を知りたい』とか良いながら襲い掛かってくる第二階層だったなぁ……それはさておき、第一階層~第三階層で、大抵その祈願の特色が大きく反映されている階層があるんだよ」
「それなら、さっきの第二階層の巨大化があてはまるんじゃないか? 私の出番が無かったのが不満だがな!」
「んー確かに、色濃くでてたよね。でもアレは敵方だけの適用、俺達には飛んでこなかったよね」
「んん?」
「まぁ一言で言えば、俺が居なかったら二人とも既にこの階層入った瞬間死んでたって事ね」
「「な?」」
な、に? と思うだろう? 俺もこんなふざけた階層はすぐにでも脱出したい。
『状態異常:倍化
一分毎に巨大化していく(残り24時間継続)』
つまり、ぼさっとしているとこの広いけど狭い通路で圧迫死しているっていう。
「状態異常として俺達に直接付与される系だね。10分もしたら動けなくなるくらい巨大化しちゃって、そのまま……」
後はわかるよね? と。
ならば俺達は何故巨大化せずにいられるのか。
「時間停止は流石に使わないけど、俺達は今バフで低速中にしてるからね、1分の時間経過が1時間相当になるようにしといた。けど、動きも鈍くなっているから敵と遭遇したら普通に対処しようとしたら大変だって事だけ、理解しといてね」
そう、敵の動きが速くなるのではない。
俺達が今、圧倒的に鈍足状態なんだ。
「まぁ期待してるよ、クーコ、ギード」
説明を一通り終えると、迷路の如く続く道を歩み出す。