160.ラストダンジョン(6)
うん、ただひたすらに進むと思ったら大間違いだよね。
「それじゃ、その気持ちだけ受け取るから戦闘力無いととと、アウト、ソドミにジュエル、ミミコは戻ってどうぞ」
「「「「「なっ」」」」」
反論する間も与えず、容赦なく本来居るはずの場所、自らのダンジョンの最深部へ送還。
「マッスルとクーコ、ギードは自分の身を守る程度には動けるだろうから、手伝ってもらおうかな?」
「俺の筋肉がやはり必要か。任せろ」
「私、危なくなったら逃がしてよ」
「ふん、私だけ残せば良かったのにさ。私の棍棒が唸るよ」
「念のため言っとくと、ギード以外の二人は危なくなったら即帰還だからね。ギードは危なくなったら放置するから自分で何とかしてね」
アウトはBBQの匂いがダンジョン内では致命的にまずい。
無限に道具をだして応戦は出来るだろうけど、デメリットだらけなのはいただけない。
とととに至っては、味方を全滅させるような加減のできない力しかないので複数人で出る場合は極力表に出したくない。
ソドミはただの(見た目だけだが)青年だし、とても戦闘できるような人物ではない。
ジュエルなんて、ただの宝石好きな女の子だし。
ミミコさんに至ってはただの酒好きだし。
あるぇ、俺の攻略したダンジョンって何だかろくな祈願者いないよな……。
「ところで、さっそく第二階層のボスっぽいのが見えてきたんだけどどうする?」
俺の言葉に、各々目を細め遠くをみつめるが皆首を傾げていた。
「いやいや、正面じゃなくて、地中で生成が始まったっていうべきかな? もうすぐ出てくるよ」
俺の言葉が終わると同時に地鳴りが始まる。
大地が裂け、その中から岩石がゴゴゴと音を立て詰みあがっていく。
「えらくまた、デカイのな……」
正面には五メートルは優に超えたゴーレムが立ち塞がっていた。
ゴーレム系って、ゲームや物語で知っているタイプとRLのゴーレムは完全に別物なんだよなぁ。
まず攻撃が、斬撃も打撃もほとんど意味が無い。
崩しても再生するし。
なら魔法で対処と思いきや、魔法の一切が効果が無い。
なら弱点となるコアがあるか? と思わせてそんなものも一切無い。
そのくせ襲ってくる、めんどくさいモブだ。
対処法としては、逃げるか同じゴーレムを作って取り込んでしまうか。
そんな辺りしか今のところ方法はみつけてない。
「私が氷漬けにしてあげる」
キンッ、とクーコが手を伸ばすと巨大なゴーレムが一瞬で氷漬けになる。
が、次の瞬間氷すらも体の一部としてゴーレムが動き出す。
「なっ」
「あー魔法は効かないぞー」
「ならば俺の筋肉の出番か。ふんっ!」
マッスルが氷のボディを纏ったゴーレムの足元を殴りつけるが、ゴキュと鈍い音がダンジョン内に響き渡る。そんなマッスルの行動なんか無かったかのようにゴーレムが叩きつけようと腕を振り下ろす。
「ッッ。少しは反撃警戒しなさいよ!」
「スマン。筋肉が喜び叫んでいて動けなかったのだ」
「煩いっ、てりゃぁっ」
「うあああぁぁぁあ」
明後日の方向へ投げ捨てられたマッスルが地面に叩きつけられてぼろ雑巾のようになったところでそっと送還しておいた。
「はぁ、二人ともさがってて。俺が何とかするから」
「おいっ、無茶はよせ! あのアイスゴーレムは少々厄介だ」
「ごめん、私のせいで」
「いやいや、二人には次のモブ相手に頑張ってもらうから、さ?」
俺は二つ程スクロールを手に取ると、一つを大地に放り捨て一つを破き捨てた。
「マジック、時空断壁」
瞬間、アイスゴーレムはその巨体の動きを止めてしまう。
「まぁ本体に魔法耐性あっても、周囲の時間ごと抉っちゃえばこんなこともできる訳で」
「さ、さすが私が認める男だ。惚れ申した、結婚してくれ!」
「凄い……最初からやってくれたら良かったのに」
好き放題だなオイ。
まぁ実際にこうして一緒に潜るのが初めてなんだから、どんだけ動けるか見ておきたかったんだよ。
クーコのアイス系は強力だからありだし、ギードはまぁ最初から強いこと知ってたからまぁうん。
マッスルは予想通り、残念だった。
「まぁそう言わずに、期待してるよクーコ、ギード。それに」
あのゴーレムが出てきた場所の大地の裂け目から、次の階層へつながる扉が顔を出しているのだから、さっさと次の階層へ行ってしまおうじゃないか。