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016.ミスティックナイト(2)

 顔を上げた俺は、ちょっとだけ待ってねと入れ替わるように落ちていくサクラの後ろ姿を見送った。

 立ち上がる程度の僅かな時間でサクラは再びログイン。目の前にふわりと輝く光のエフェクトと同時にソレは姿を現した。


「遅いぞ、もう」

「ふぁ」


 思わずそんな声が漏れ出る。ビュッと吹き出しと共に『ふぁ』の文字だけが出てしまい慌てて言い直す。


「サクラ、だよな」

「勿論」


 何てこった。俺の待ち時間にこいつは全力をだしたってのか?


「キャラメイクに力入れすぎだろぉぉぉぉ」

「イイとはもう知り合いだし、元々アイちゃんに私の好みの男性像をみせつけようって頑張ったキャラだったからね」


 ほぅ、好みは長身細身の金髪パッツンさんっと。

 ……俺とかけ離れてますねええ。


「それで、何故自分自身に似せて作ったし」


 そこに居るのは、昼間に出会った桜、その人が居た。

 髪型から髪の色、服装までもデフォルトから選べるバリエーションではなく、3Dでしっかり衣装せいふくを作り込んできていた。


「可愛いでしょ? 折角知らない世界を冒険するんだから、自分の姿でいきたいじゃん」

「へぇ、そういう発想もあるのか……」


 身長がもう少し欲しいと思ったり、顔がもうちょっと良かったり、運動がもう少し出来ればと思う事は多々ある。勉強だけは気合で頑張っているが、それ以上に遊びに夢中なわけで。


「さぁ、行こう! イイ、冒険に!」

「ああ、勿論さ」


 即席で作ったデフォルトの初期で選べるアバターキャラ、身長も体重も全て真ん中のデフォルト値の姿の俺は手を引かれるようにヘルダンジョンへ滑り落ちていった。


「ふぁー、ヘルってもっと禍々しいかと思ってたよ」


 違いない。俺も二回目のヘルダンジョンだが前回と同じく普通の洞窟エリアに降り立った俺たちは周囲を見渡す。


イイ:攻撃力10 防御力10 体力10 魔力10

桜 :攻撃力10 防御力10 体力10 魔力10


 俺達の初期パラメータにも変化は無く、しばらく移動すると王道モンスターのゴブリンが二体正面からノコノコとやってくる。


 その姿に、敵意は無いのか? と一瞬だけ気を緩めそうになるが口だけは動かしてノーアクションでソレを完成させていた。


 発動と共に、俺の頭上にビュッと文字が浮かび上がる。

 そんな俺と同じく桜の頭上にも同じ文字が浮かび上がっていた。


「「「朱き大地の奥底より 神の怒りが天を貫く イードの魂

  ヒ ネ ホ ア ヒャ ゴ ハ ス サ ネ カ フ ヒ バ

   ロウ リー ホハ カエ アー ズマ アーク

    祝福を マジック」」」


 突き出した手の先からは炎の塊が飛び出る。

 ゴブリンたちも、背に隠していた血濡れた鈍器を手に握ったまま予想外の先制攻撃に成すすべなく焼き尽くされていく。


 ピュキン、と良い音と共にドロップアイテムを落としていた。


「ナイス桜」

「イイも覚えたんだ!」


 至って普通の女子高生なのに、自分よりも上級プレイヤーと言わんばかりの行動力に驚きしかない。


「まぁ、な。しかし桜は普段からゲームよくするのか?」


 昼間は出来なかった話題を持ち出す。何となく、リアルではリアルの会話があるわけで踏み入った話題は特に出る事が無かったのだ。


「んー? アイちゃんの付き合い程度かなぁ。でも、下手くそは嫌だなぁ。すぐ逝っちゃって放置プレイさせられるし、口だけ達者で実際はシュシュシュッて対戦したらすぐに果てちゃうし。私は人生楽しくがモットーだよ」


 要するに、素人相手の領域は既に脱しているということだろう。


「イイは面白いし、本気で遊んでるって感じが良いよね! これこそ究極の無意識運動ダイエットだね!」

「へいへい、おっ、これ良いんじゃないか?」


 話しながらもドロップ品の鑑定をする俺達。


「 輪廻のリング:魔力+1

         敵を倒すと、ボーナスで魔力が1回復する」

「こっちも良さそうだよー。

  ガラスの灰皿(鈍器):攻撃力+1

             軽くて丈夫。ヘッドショットで一定確立で即死」


 装備を両方桜へ装備させると、何とも心強いパートナーの爆誕である。


「俺用の武器もはよ、はよっ!」


 思わずテンションがあがり、ダンジョン内を駆け回る俺達。

 ここがヘルダンジョンだという事も忘れて、体内時間の基準値、3時間程のプレイを第一階層で過ごしていた。

 時刻はAM6時を過ぎたあたり、そう思ってクロックを呼び出した俺は混乱することとなる。

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