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157.ラストランジョン(3)

 千里眼が常に発動する眼見のモノクルの誘惑に耐えつつ(あまりにも難易度がさがったためスグに外している)巨大な弓矢ロードを抜けると、ゴゴゴゴ、と地鳴りが聞こえてくる。


 基本パターンならば、巨大な岩が転がってくるとかトラップ系が続くんだが、これはどうにもトラップのような音ではない。


 見ちゃうか。


 折角持っているのに、出し惜しみする必要は何処にもない。

 モノクルを覗き込むと、くっきりと巨大な顎をワシャワシャさせる存在が視界に入った。

 昔の俺なら気持ち悪さや嫌悪感で動くこともままならなかっただろうが、慣れとは恐ろしいもので。


「あれって、アリだよなぁ。どうみてもアリだよなぁ……アリだー!」


 道を埋め尽くす数の巨大蟻が、こちらに向かって前進を開始していた。

 しかしデカイ。

 あの顎でワシャっと掴まれれば一発で体が真っ二つに裂けてしまう事間違いなし。

 いくら優秀なOPがついてようが、絶対てきに信用出来るOPなんて無いんだから、良い意味でも悪い意味でも絶妙なバランスである。


 いくらこの鎧が物理耐性が優秀でも、体が先にぷっちんしちゃダメって訳だよな、うん。

 過去に経験がある故に。

 あぁ、あの時めちゃくちゃ苦しくて死に戻った時は枕を何度も何度も濡らしたなぁ。


 なんて思い出をかみしめていると、容赦なくアリたちは距離を詰めてくる。


「しゃーない、これも使っていくか……」


 ピンアウトしてメニューを開くと、無限に続いているかと勘違いしそうな程奥行きが続いている螺旋をグルグルグルっと手早く回転させ移動させると、『ととと』と書かれたアイコンまで辿り着く。


「いでよ、黄金おうごん太陽たいよう、ゴールドオブサン!」


 頭上に黄金の光が放出されると同時に、スイカ程の大きさの球体が出現する。

 そして。


「ふぃ、久しぶりに出してくれたな? ってか私達を物扱いするって酷くない? ねぇ、ねぇ!?」

「あー、それより前みて、前」

「あぁん? 前? 何も見えな、ちょ何勝手に髪触ってんだよ! ん、やけに視界が……ヴァアアア!?」


 見てて飽きないなコイツ。

 祈願者の一人、黄金の太陽を召喚する者。

 その名も『ととと』。


 ダンジョン攻略のたびに増える祈願者。

 時の支配者である姫様、主様は私だけのだと一蹴する。

 結果、今のように召喚の呪文を唱えない限り外へ出れないよう、インベントリの中に封印する処置をとっていた。


 で、この『ととと』は子供の男の子だ。

 で、眼見のモノクルをつけて正面を向かせてやったら、大量の蟻が視界に入りキョドッている最中なんだよな。


「あれ、お前の力で何とかしてくんね?」

「ヴァア、ア、アアン? そういや全く慌てる必要ないじゃねぇか、驚かせやがって!」


 口では大丈夫そうに装っているけど、膝がガクガク未だに震えているからね?


「それじゃ、力を借りるよ。ゴールドオブサン、全てを黄金に成せよ!」

「よしきたっ!」


 とととが手を天に向かって突き上げると、先ほど出現していた黄金の塊が天へと飛び上がり、その質量を爆発的に増した。


「黄金の太陽の光を浴びた物は、全て黄金へと変化する!」


 ピカッ、と黄金の光がダンジョン全体を包み込むと、土で出来ていた大地が、その全てが黄金へと一瞬で変化してしまう。

 ちなみに今は『ととと』が近くに居る為、俺には完全耐性がある。


「おーおー、さっすが。じゃ、お疲れ!」

「わっ、ちょっ久々の出番がぁ、むしろ初とうじ……」


 インベントリに『ととと』を収納すると、黄金まみれになったダンジョンにため息が出てしまう。


「この力、制御云々《せいぎょうんぬん》抜きで、最高にやばいよなぁ。味方が居たらぜってぇ使えねぇわ、うん」


 黄金化したアリたちは、生命としての機能を全て奪われ絶命していた。

 しばらくすると、奇跡の力が解けアリたちは同時にバシュンと音を立て光の粒子となり消え去っていった。


 うん、アイテム回収しなきゃ。

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