156.ラストダンジョン(2)
現れる敵も単体で動いている事が多い第一階層は今のところ何一つ詰まることなく、順調に進んでいる。
ラストダンジョンとも呼べるココも、第二階層から一気に危険度は加速度的に増していくだろう。
「おるぁ!」
おなじみのモブさん、ゴブリンさんを叩き潰すように光大剣で倒すと見慣れないドロップ品をみつけてしまう。
『眼見のモノクル:千里眼が常時発動する。
OP:宇宙眼見(魔力を消費する事により宇宙の果てまで見通す)』
「なんじゃこりゃ、なんてこった……」
ざっと二百年プレイしているが、まだ見ぬオプションと出会える瞬間は飽き知らずである。
これだからハック&スラッシュは最高だぜ!
「……ちげぇ、思わずハクスラかと勘違いするとこだったぜ……」
ローグライク系だよな、うん。ちょっとバグってアイテム落とさなくなったけど、それもまぁ全てが元に戻れば……。
「うわぁ、何だよこれ……」
思わずモノクルをつけて唸ってしまう。
謎の光源何か必要ないくらいに奥の方まで見通せる。あぁ、あのゴブリン転んだ! くそ、見えてないところでもしっかりお茶目しやがって。
「これ一つで光源系アイテム全部死にアイテムになっちまった……」
まぁ、これも醍醐味の一つだよな。
気を取り直してっと。
チグハグな見た目は誰も見ていないのでダンジョン内限定で装備しておこう。
まだ見ぬアイテム収集もしたいところだけど、ここまで来て収集に何年もかけるつもりはない。
えいっ、やっ、とぅー!
と、ワンパンでモブを沈めつつ第二階層へ続く扉前に辿り着いた。
この間、わずか二週間。
「くっ、思わず知らないOPがほいほい出るから収集してしまった……」
千里眼OPで実はスグに第二階層へ行く扉を発見していたが、しょうがないじゃん……。
暗黒オプションや、激レアなブレイク系オプションや、何か知らないけど戦闘機が出るスクロールがドロップしたり。物珍しい物がてんこ盛りだった。
「収納系オプションが使えなさ過ぎて悲しいな……使い道探してぇ」
無駄の中にこそ、何か逆転の一撃が隠れていないかと試行錯誤していると、あっという間に二週間が過ぎていた。
「今度こそ、いざ第二階層へ」
第二階層は久方ぶりに見る、直進系の一本道だった。
それにしては、横幅が数十メートルはあり、分厚い土壁はひっかいた程度では崩れる事も無い程の強度を誇っていた。
このパターンでよくあるのが……。
「くるっ」
目を細めると、遥か彼方から放たれた弓は空高く舞い上がり、アローレインとして降り注ごうとしていた。
天井が無いパターンで、あの弓の数が降り注ぐのは正直早く対策をとらなければ一瞬で体力が持っていかれるだろう。
全て光大剣で薙ぎ払う? いや、薙ぎ払っている最中も次々に降り注ぐアレは防ぎきれない。
一気に駆け抜けるか? これもダメだ、あの矢に時間対策が施されている場合を想定しないのは愚策だ。
やはり何とかアレを防ぎきらなければいけない。
「早速、使わせてもらいますよっ! マジック!」
バミュンッ、と現れたのは戦闘機だ。
その真下に滑り込むように隠れると、数秒の静寂の後、まるで世界が崩壊してしまうのではないかという程の轟音が大気を支配した。
息をのむ、次の瞬間。
「くっ」
ガンッ、ガガガガガガガガガガガガガンッ。
大量の矢が空から降り注ぐ。
そう、まるで丸太並みの巨大さを誇る矢が次々に大地に突き刺さり、みるみる内に視界は閉ざされていく。
戦闘機の耐久力は驚くほど高かったのか、丸太並みの巨大な矢を数本貫通させただけに留めていた。
両翼は完全に大破していたが、本体部分を貫いたのは一本だけで、その一本は俺の目の前で勢いを完全に失うように停止していた。
「これが普通の弓矢トラップとか、ふざけすぎだろう……」
弓の雨が鳴りやむと、息をフッと止め真上で大量の矢が刺さった状態の戦闘機を天目掛けて蹴り上げると、ひょいっと立ち上がるって見せると数百メートルは真上に浮き上がったソレめがけ狙いを定める。
「ハァッ!」
光大剣を躊躇なく真上に投擲。
まるで光の柱が経つかのように一直線の光が天を穿ち、轟音と共に戦闘機は爆発していた。
ロストしたかのように見えた光大剣は、インベントリを覗くと戻ってきていたのですぐさま装備し直す。
「次っ!」
大地に突き刺さった矢の檻に向かってスクロールを取りだすと、光大剣でスクロールを一突き。
「マジック! ドリルシューターッ!」
回転と貫通属性を得た俺の光大剣は今度は真横に投擲される。
ザジュ、と音がした瞬間視界を遮っていた矢の檻はトラックが余裕で通れるほどの大穴を穿ち、俺の進むべき道を印していた。
すぐさま、魔力が回復する甘々ビーンズを二つぶ口に含むと、消費した魔力2がすぐさま回復する。
「ったく、基本構造は同じでも悪意のあるデカさは半端ないな……」
呟きながらも、思わず口元が緩んでしまうのが隠せなかった。