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015.ミスティックナイト(1)

 結局、師匠は多額の賞金を手に入れそのまま疲れた、と呟くとベッドの中に潜り込みスヤァと静かに眠りについてしまった。


 俺はというと師匠のプレイを見守りながら、的確な指示や戦術変更をこなしつつ、自らのプレイも一切ブレない単独行動ぜったいかりょくをみせつけていた。


 と、AM3時を過ぎた頃に俺は思い出す。


「やべぇ」


 思わず声に漏れる失敗の色を帯びた声。

 今夜、サクラと潜る約束をしていたにも関わらずブッチをしていた事実に気が付いたのだ。

 師匠の邪魔をしないようにと、落としていた携帯の電源を入れる。ピピピピピピピ、と凄い勢いで未読メッセージが累積していく。


『イイちゃん、やろー?』

『イイちゃん、まだー?

 もうすぐ約束の時間だよー?』

『私、待ってるよー?

 待ってる。

 もうすぐ時間だね』

『あれぇ?

 何でかなぁ?

 私時間間違っちゃったのかなぁ?

 返信くらいしてほしいな』

『まだ?』

『まだ?』

『待ってる』

『待ってる』

『マッテル』

『マッテル』

『マッテル』

『一時間間違っちゃんだよね、きっと。

 怒ってないから、早く来てね。

 うち、全然怒ってないからね?』

『どうしてなのかな?

 日にち間違っちゃったのかな?

 ごめんね、何度も何度も。うざいよね?

 でもうちやってせっかく予定を……』


 読むのを止めた。

 とにかく、非常識かもしれないが電話をかけてみる。


『ピッ……もしもし』


 と、僅かワンコールが俺の鼓膜に響く前に発信した電話はとられていた。


「あの、サクラ、さん。すみません、約束したのに連絡もしないで俺」

「んーん、何か事情があったんでしょう? 別にいいよ、それより始めよ?

 うち、ずっと待ってたんやで?」


 おーう、本気でこの時間まで待ってらっしゃったようだ。

 プレイしながら、はないか? こんなにすぐ電話をとれるわけがない。


「そ、そうだな。すぐ準備するから、そっちの自室マイルームへ行くな」

「うん」


 サクラの携帯にはまだ俺の番号しか登録されていないという。どうも、メモリー情報は全て破損しており、電話帖の登録内容を全て覚えている訳もなく親友だと言ってたアイという子の番号が入るハズの場所に、俺の番号が入っていて。


 つまり、この夏休み以来連絡を取り合える友人が俺しかいなかった訳で。本人も、ずっと寂しかったとか昼間に言っていた訳で、ああ。


 本当に悪いことをしてしまった。


 RLへ没入すると、俺はまっさきに土下座をしていた。

 それはもう、キャラの頭グラが地面へ埋まるほどに深く深く、俺は謝罪していた。


「遅れてごめんなさいっ!」

「んーん、今はいったところだし気にしないで良いよ」


 真摯な声で謝るも、吹き出し文字で本気で謝っている事が伝わるだろうか?

 サクラの操作するキャラから出る吹き出し文字を読み取っても、本当のところ気にしていないのかどうかは察する事が出来なかった。電話口の向こうから聞こえてた声色からは、そこまで怒っていなかったようにも聞こえたが……。

 ソウデスネ、リアルでずっと待ってただけですもんね。

 この貸しは必ず、プレイで返そうと思う俺であった。

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