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142.とろろ昆布クエスト(1)

 つい先日まで女子大生だった私は夏休みまっただなか、プロゲーマのチームメンバーと東北で行われていた小さなFPSの大会に参加する為車で移動していた。


 私の事を少し話そう。


 ゲームのプレイスタイルは主に心理戦で裏をかく事をメインとした立ち回りで、相手の心をもて遊ぶことが出来れば満足する傾向にあった。


 そんな私も気が付けば他の人よりも裏をかく事、あおっていくような行動が頭一つ突き抜け、日本代表のプロゲーマ、HotGirlsホットガールズの一員となっていた。


 現実リアルで人と慣れ合うのはあまり好きじゃなかったけど、何せ勝てばお金がもらえる。

 それも日本代表のチームメンバーがずば抜けて強く、自分のプレイスタイルはそのままに陽動しているだけで敵が次々に倒れていくので、思いのほか過ごしやすいチームだった。


 そんなじょしだいせいと女性の社会人で構成された私の所属チームは、代表とかプロとかの枠を超えた伝説のプロゲーマー、マイティこと阿賀沙汰菜茶あかさたなちゃに呼び出されビックサイトに召集されていた。


 割の良い仕事の依頼とかで、RLというゲームで目標ミッション達成クリアを目指してほしいというものだった。


 ヘルモードの攻略。


 どうも、そうすれば報酬ががっぽり入るという事だった。

 私達は目の色を変えて挑むも、情報として人類が滅亡するかもしれない240リミットの脅威の目標ミッションも話を聞いた。


 報酬だけでも相当な額なのに、それに加えマイティが初めて弟子を取る発言(そう皆解釈している)が飛びでた為、更に躍起になる。


 VRMMOで人類が滅亡とか、マイティは一体何と戦うつもりなんだろう、と他人事のように私たちはローグライフのヘルモードへと挑戦した。


 ダンジョンはヘルという名にたがわず、何百回と死に戻りを繰り返した。


 そして手にした祈願の力、密着を手にしたころには240リミットの脅威がどんだけヤバいのかわかってしまっていた。

 たった一日という時間で、私はこの運命から逃れる事は出来ないことを理解する(しる)




 で、気が付けば長時間の作業ゲーム地獄が待ち構え、危機感は徐々に薄くなり結果。


「どうしてこうなっちゃったのかしらねぇ」

『姫、判断は完璧だったと僕は思うよ』


 ハスキーボイスで応えてくれるハウルに、マイルームで頬杖をつきながらこれからどうしたものかと熟考していた。


「皆とは連絡とれないし、ログアウトも効かなくなっちゃったし……やっぱあの遠くで青く光る粒がパァッて輝いたアレって……」

『これで3回目の質問だよ、姫。アレは地球で、この大地と衝突してはじけ飛んだんだよ』


 ぐぅ。

 胸がきゅうきゅう絞めつけられる想いだ。

 皆死んじゃったのだろうか? こうして意識をこの世界に残したままRLのキャラクター、とろろ昆布としていつまでいられるのだろうか?


『それに比べ、姫は無傷で密着不可分ツキマトウモノをこの着陸させたんだから、僕は尊敬するよ』


 密着不可分ツキマトウモノがこの大地に呑み込まれそうになった時、私は祈願の力で宇宙船と240リミットの脅威を密着させた。


 祈願者は、願い事をしたのに何も願い通りにならなかったと命を目の前で絶ってしまった。

 本当、思い通りになったりならなかったり、そんな次元で命を粗末にするこの世界の住民の思考は相容れないだろう。


 私達地球人は思い通りにならない中、必死に頑張って生きているってのにねぇ。

 祈願者の想いは好きな人と常に一緒に居たい、離れたくないという願いだった。

 漫画で昔よくみかけたなぁ、体の一部が異性とくっついて離れなくなるアレ。


 まぁそんな力と、人工知能ハウルの力、そしてドロップ品の数々を駆使して皆を探しに行かなければいけない。


 私一人では何もできないから、まずは皆を探す。

 探したら、皆の力を頼ってこの局面を切り抜けてもらおう。

 うん、そうしよう。


 私はアイテムボックスから次々にアイテムを手に取り、マイルームの外へと降り立った。

 死んだらどうなるのかわからないので全力だ。

 深呼吸一つすると、私は操縦桿を握り絞め通達する。


「皆さん、私たちはこの240リミットの脅威の地表を移動して仲間を探す旅に出ます。非力な私のまがままな判断だけど、ごめんなさい」


 私は城内放送をして今後の方針を伝えた。

 すると『うぉおおぉお』とやる気に満ちた雄たけびが外から聞こえてくる。


「はぁ、知らない人たちとなれ合うの、苦手なんだけどなぁ……」


 生きる為、前に進むためにはこの宇宙船の住民たちとも仲良くしていかなければいけない。

 気合を入れなおすと、とりあえずゆっくりと前進するようにオートパイロットモードにして(ハウルが設定してくれた)ごろん、とソファに倒れるように体を預けた。


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