139.絶望の壁(4)
さらに3時間が経過した頃、私たちの陣形は崩れつつあった。
と、いうのも。
「皆単純作業に眠気を覚えだしているわね……」
非常にまずい傾向にある。
どんなに苦しく、痛みを伴い、理不尽な難易度を誇っていたヘルダンジョンだろうと、やはり挑めるという感覚があるからこそ何度だってアドレナリンをドバドバ出しながらプレイが出来ていた訳で。
この作戦に辿り着き、開始した当初は人類のためだーとか何だかんだのやる気に、疲れも忘れ240リミットの脅威という名の大地に攻撃を続けれていた。
だが現実はどうだ? 単純作業をひたすら何十時間も繰り返さなければいけない。
プロゲーマーだからといって、『好きでもない』ジャンルのゲームを延々と続けれる程人間出来ていない。
要するに飽きからくる、眠気。
イベントが何も無さすぎるのだ。
地球の皆が応援してくれる! とか、そんなイベントどころか人類は暴動を起こす流れにシフトしつつあり、ビックサイトに集まっている面子だけしか本気で何とかしようとしているメンバーはいないくらいで。
要するに、重要なことのはずなのに阿保らしくなってきたり、寝てしまいたいとか思ったり。
何故一介のプロゲーマーがこんなことをしているのだろうかとか。
私ですら、この停滞感は苦痛しか感じなかった。
『菜茶、効率が低下しているぞ』
『あんたは良いわね、まっすぐで』
このままではいけないのだが、叱咤する程の元気もそろそろ湧かない訳で。
「困ったわね。人類の敵って、未来を理解しない怠惰な心なのかもしれないわね」
そんなため息交じりの独り言をしながら、ただひたすらに主砲を繰り返し放っていた。
そして気が付いた時には、240リミットの脅威が全宇宙を飲み込んでいた。